これまで公務員のデザイン職に関する記事を色々と書いてきましたが、デザイン・クリエイティブ枠の採用は事務職としての採用が多いです。
一方、同じデザイン職でも事務職ではなく「研究職」としての募集をしている自治体もあります。
今回ご紹介するのは、そんな研究職での募集をおこなっている岐阜県多治見市の「研究職(デザイン)」に関する試験について徹底分析。
多治見市といえば、1300年の伝統ある美濃焼の歴史や技を受け継ぐ町として有名です。
窯元では、陶芸家や職人たちが手仕事の器を作り続けており、陶磁器の研究機関である「多治見市陶磁器意匠研究所」には毎年多くの若者が学びに来ています。
そんな多治見市のデザインに関わる研究職試験では、いったいどんな試験がおこなわれているのかを一緒に見ていきましょう。
美濃焼で有名な、岐阜県にある多治見市ってどんな街??
引用:ミュージアムガイド | 多治見市美濃焼ミュージアム (tajimi-bunka.or.jp)
まずは多治見市の特徴について簡単に触れておきましょう。多治見市の公式ホームページには以下のように記載があります。
多治見市は、昭和15年に誕生しました。古くから陶磁器やタイルなど美濃焼の産地として発展し、昭和50年代の丘陵部の宅地開発や平成18年の土岐郡笠原町との合併などにより、人口約11万人の東濃地方の中核都市となりました。
開山700年の虎渓山永保寺、設立80年の神言修道院、美濃陶芸の人間国宝を4人輩出するなど、長い歴史に裏打ちされた人を育てる文化を礎に、企業誘致や岐阜県No.1の教育環境、地域医療の充実など、「人が元気!町が元気!多治見」を目標として、まちづくりを進めています。
引用:多治見市/市の魅力 (tajimi.lg.jp)
美濃焼(みのやき)は、岐阜県の東濃地方の3つの市(多治見・土岐市・瑞浪市)で主に生産される陶磁器のことで、多治見市はその3つの市のうちの1つ。
私たちが普段何気なく食卓やお店で使っている食器の多くが、実は「美濃焼」ということも少なくありません。
市内には、美濃焼が並ぶショップやギャラリー、手軽に陶芸が体験できる作陶施設も充実しています。
そんな歴史的な背景を持った多治見市がデザインや陶芸の文化の育成に力を入れるというのは、実は自然なことだったりもします。
美濃焼で有名な、多治見市の研究職(デザイン)試験について
引用(掲載終了):令和5年度 多治見市 職員及び多治見市任期付職員採用試験 受験要項(1月試験)
多治見市では令和5年度に、「研究職(デザイン)」の募集をおこなっていました。スケジュールをみてみると現在試験の真っ只中で、今年度の募集は〆切。
そのため、ここでは次年度以降に採用募集があった時のために、過去の試験を分析しておきましょう。
多治見市で、「研究職(デザイン)」の職員募集をおこなった年度について
結論からお伝えすると、多治見市の「研究職(デザイン)」の募集は毎年おこなっている訳ではないようです。
以下の表をご覧ください。
多治見市の用試験実施状況 (大卒以上上級) | 試験区分 | 採用予定人数 | 受験申込人数 | 最終合格者 | 合格発表 |
H28年度(H29.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | 1人程度 | 1人(男1) | 1人(男1) | H28.10.7 |
H29年度(H30.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | 1人程度 | 4人(男3,女1) | 0人 | H29.9.22 |
H30年度(H31.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | 2人程度 | 5人(男2,女3) | 1人(女1) | H30.8.31 |
R1年度(R2.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | 1人程度 | 4人(男0,女4) | 1人(男0,女1) | R1.8.30 |
R2年度(R3.4.1採用予定) | – | 募集なし | – | – | – |
R3年度(R4.4.1採用予定) | ※研究職(学芸員) | 1人程度 | 5人(男2,女3) | 1人(女1) | R3.12.13 |
R4年度(R5.4.1採用予定) | – | 募集なし | – | — | – |
R5年度(R6.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | 1人程度 | 未定 | 未定 | 2月上旬 |
多治見市の研究職(デザイン)については、R2年度からR4年度まで募集がありませんでした。ですが、R5年度には再度、募集がおこなわれています。
現在はR5年度(R6.4.1採用予定)の試験がおこなわれている最中で、2024年の2月上旬ごろには合格発表があります。
毎年募集がおこなわれている訳ではないので、広報誌やホームページからその都度チェックをしておかなければなりません。
受験を希望する際は、その点にまずは注意しておきましょう。
また、多治見市の研究職(デザイン)の試験は、グラフィックデザイン寄りというよりは、陶磁器やプロダクト部門における研究職を募っているようです。
※ほか、R3年度には研究職として学芸員の募集をおこなっているようですが、こちらも毎年募集がある訳ではないのと、R3年度以外に募集はありません。
研究職の学芸員についてはデザインの職種よりも、さらに狭き門であることも頭の片隅に入れておきましょう。
多治見市の「研究職(デザイン)」における職員採用試験スケジュールについて
先ほどもお伝えしたように、多治見市では「研究職(デザイン)」の募集を毎年おこなっている訳ではありません。
それだけならいいのですが、実は年度によって募集の時季もバラバラです。以下の表を見てください。
採用試験実施状況 (大卒以上上級) | 試験区分 | 第1次試験日 | 第2次試験日 | 第3次試験日 |
H28年度(H29.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | H28.7.24 | H28.8.22 | H28.9.27 |
H29年度(H30.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | H29.7.9 | H29.8.9 | H29.9.13 |
H30年度(H31.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | H30.6.16 | H30.7.19 | H30.8.21 |
R1年度(R2.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | R1.7.7 | R1.7.25 | R1.8.22 |
R2年度(R3.4.1採用予定) | – | – | – | – |
R3年度(R4.4.1採用予定) | ※研究職(学芸員) | R3.10.24 | R3.11.11 | R3.12.1 |
R4年度(R5.4.1採用予定) | – | – | – | – |
R5年度(R6.4.1採用予定) | 研究職(デザイン) | R6.1.21 | R6.1.25 | R6.1.30 |
H28年度~R1年度まで研究職(デザイン)の試験は、おおむね6月前後に第一次試験が始まっていましたが、R5年度に関しては1月が第一次試験の日となっています。
そのため、R5年度については「もう募集は無いんだな…」と思っていた人は、今回の冬の募集を見逃してしまうかもしれません。(もしかしたら、実際に見逃している人もいるかも…)
せっかく募集をしているのに、自分が見落としていて採用試験を受けられなかったというのでな残念過ぎますよね。
このように、毎年募集をおこなっている訳ではない自治体に関しては、こまめに自分で情報を取りに行く必要があります。
ぜひ、来年度以降も気をつけてみてください。次に募集がかかるとしたら、来春以降という可能性も大いにあります。
多治見市の研究職(デザイン)の第一次試験について
多治見市の第一次試験の内容は以下の通り。
- 基礎能力検査
- 小論文
- 適性検査
- 実技試験(研究職のみ)
それぞれ順番に見ていきましょう。
基礎能力検査
多治見市の募集要項をみてみると、「言語面・数理面の基礎能力を問う検査(択一式)」という記載があります。
公務員試験の対策をしていない人でも受けやすい試験ということで、こちらはSPI3の試験である可能性が高いです。
他のデザイン・クリエイティブ枠の試験でも同様ですが、最近では自治体も民間企業からの人材受け入れに積極的であり、多様な人材を求めています。
そのため、公務員になるための参入障壁を下げて優秀な人材を確保しようと様々な試験制度の改革を実施。
多治見市もそのような形を取っているようです。
SPI3については、就職活動や転職活動で慣れている人にとっては、そこまで難しい試験試験ではありません。
ただし、今まで何もSPI3についての対策をしてこなかった人は、必ず対策をしておく必要があります。
小論文
小論文についても募集要項を見てみましょう。募集要項には、「小論文 論理性、思考力などをみる検査」と記載があります。
ですが、テーマについては特に何も記載がありません。
過去問についても、特にホームページから情報を得られなかったので、他の自治体を例にどんな問題が出題されるのかを予想してみましょう。
たとえば、神戸市の令和4年度におけるデザイン・クリエイティブ枠(総合事務)の職員採用試験では、以下のような小論文のテーマが与えられました。
上記の内容は、神戸市における施策をもとに論文を展開していく構成になりますが、神戸市の所を「多治見市」に置き換えれば、小論文のテーマはある程度想像できます。
このような問題は全国どこの自治体でも起こりうることであり、多治見市のホームページなどからどんな施策に力を入れているのかを確認しておけば良いでしょう。
たとえば、多治見市では「たじみ子ども未来プラン」と称し、質の高い幼児期の教育・保育の総合的な提供や、待機児童の解消、地域での子ども・子育て支援の充実を図ることを目指しています。
参考:多治見市/たじみ子ども未来プラン (tajimi.lg.jp)
このように、似たような施策はどの自治体でも実施していますので、事前に対策をしておけばOKです。
適性検査
適性検査については、「対人能力やストレスに対する適応性などをみる検査」とあります。
わざわざ「言語面・数理面の基礎能力を問う検査(択一式)」である基礎能力検査と分けて書いてあるということは、こちらは「性格検査」の部分であると推測できます。
適性検査の「性格検査」について、具体的に書かれたリンクがありましたので、参考までに載せておきます。
適性検査については、よっぽど変な回答をしない限り、試験の合否に影響を与えることは無いと思います。
特に、大きな対策をする必要は無いかと思いますが、もし心配な人は適性検査に関する対策本を1冊読んでおけば問題ないでしょう。
実技試験(研究職のみ)
最後に、実技試験についても確認しておきましょう。こちらは、デザインなどの研究職を希望する人のみに課される試験です。
募集要項には、「粘土による造形技術試験」との記載があります。
また、「※実技に必要な諸用具は、市が用意します。作業のできる服装は各自で用意してください」との記載も。
デザイン初学者が初めてこの文言を見たら驚くと思いますが、実際に造形やデザインの勉強をしてきた人にとっては割と馴染みのある試験の1つでしょう。
美大受験のためのアトリエや、美術の時間に陶芸作品をつくったことがある人もいるかも知れません。
イメージ的には、そのような内容であると捉えて問題ないでしょう。
ただし、採用試験という性質上、レベルはかなり高いものと想像されます。
対策を練っておかなければ合格ラインにたっするのは至難の業。
もし、多治見市の研究職(デザイン)を希望する場合は、筆記試験だけでなく、実技試験の対策もしっかりと練っておきましょう。
実技試験対策について
引用:多治見市公式ホームページ (tajimi.lg.jp)
ここまで記載した内容で、一番不安に思う内容が多治見市の実技試験ではないでしょうか?
実技試験については、対策する本や公務員試験予備校がないので不安に思っている人もいるでしょう。
特に、美術系大学ではなく、一般大学から多治見市の研究職(デザイン)を目指すとなると、ここが合否の分かれるポイントなる可能性があります。
ですが、安心してください。
実は、多治見市には「多治見市陶磁器意匠研究所」という機関があり、運営も多治見市がおこなっているため、授業料等も美大や専門学校に比べて破格。
この研究所でしっかりと造形に関する技術を磨けば、合格レベルの技術はしっかりと身に付けれらるでしょう。
参考までに研修費について記載すると、以下の通り。
実習料 | 入所料 | 教材費 |
220,000円(年額) | 62,500円 | 30,000円程度(実費) |
全部足しても、年間で300,000円くらいのリーズナブルな授業料となっています。
「デザインコース・技術コース」は2年間、「セラミックスラボ」は1年間というのが原則の研修期間となっています。
ただし、セラミックスラボについては、市長が特に適当と認めたものは、引き続き1年を上限として延長することが可能。
そのため、両方のコース合わせて、最大で4年間この研究所に通うことができます。
もし、美大や専門学校、あるいは、アトリエなどに通ったことが無く、それでも多治見市の研究職(デザイン)に興味があるという人は入学を検討してみてもいいでしょう。
もしかしがら、面接試験の話のネタになり、合格へ一歩近づくことができるかも知れません。
多治見市の研究職(デザイン)の第二次試験について
第二次試験は、「人物についての個別面接による試験」と記載があります。
また、募集要項をよく読むと「※小論文試験について 1次試験日に実施しますが、採点は2次試験で行います」との記載もあります。
つまり、第一次試験の小論文試験の配点は、第二次試験の面接試験の点数と合算されるということ。
第一次試験をクリアしても小論文の点数が低いと、第二次試験の合否に大きく影響します。
その点を踏まえて、小論文試験の勉強も怠らないようにしましょう。
多治見市の研究職(デザイン)の第三次試験について
多治見市の「研究職(デザイン)」における第三次試験も、「人物についての個別面接による試験」と記載があります。
基本的には、例年、この第三次試験を突破すれば、最終合格となるようです。
第二次試験の面接と違って、おそらく第三次試験は多治見市の中でも役職の高い人物が面接官になるということでしょう。
第二次試験までの配点や受け答えなども引き継がれている可能性がありますので、もし第二次試験を突破したらその振り返りをおこなっておきましょう。
面接試験は特に苦手な人も多いため、面接対策のためだけに公務員試験予備校を活用するという手段を取るのも戦略の一つです。
たとえば、公務員試験対策で有名な「EYE公務員試験予備校」では、面接・小論文コンパクトコースのみを選択できるセレクトコースを設置。
面接や小論文の対策に不安がある人は、「個別相談の申込」または「資料の請求」をして、自分に合うかどうか検討してみても良いでしょう。
公式ホームページを見てみると大学生協からの推薦もあり、「営業や勧誘などは一切いたしません」との文言もあるので、その点については他の予備校よりも安心できますね。
通信講座での講座はもちろん、個別相談は校舎の対面実施だけではなく、電話やZoomでもおこなっています。
不安に思うことは一度相談をしてみて、もし合わないと思ったら違う予備校を探すか、他の対策を練ればOKです。
多治見市の研究職(デザイン)の実技試験対策は、特に入念に!
多治見市の「研究職(デザイン)」の採用試験は、今まで紹介していた「デザイン・クリエイティブ枠」の事務職の試験とは異なり、実技試験や小論文にも比重が置かれます。
特に、実技試験についてはある程度、美術や造形に関する知識・技術が無いと太刀打ちできないでしょう。
美大や専門学校の在校生や卒業生であれば対策は容易かも知れませんが、それ以外にも筆記試験や小論文試験を課されます。
一般大学や美術系大学を卒業する人(卒業した人)、どちらが有利・不利という訳ではなく、満遍なく試験対策をおこなった人が合格できる試験と言えるでしょう。
もし、絶対に多治見市の研究職(デザイン)に就きたいということであれば、本文中でご紹介した「多治見市陶磁器意匠研究所」に通ってみるの良いですね。
他のデザイン職の試験と併願を考えている人は、なるべく他の試験に影響が出ないよう注意しておきましょう。
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