公務員のデザイン職を志望している人の中には、「イマイチ、組織の中でどんな仕事をしているのかイメージが湧かないなあ…」という人いるでしょう。
確かに公務員の世界と言えば、今までのお役所仕事のイメージの方が先行しているため、なかなか「デザイン」や「デザイナー」というクリエイティブな単語とは結び付きづらいです。
ですが、Googleなどの検索エンジンで「公務員 デザイン職」などの単語を検索すると、今では山のような情報がヒットします。
そこで、今回はそんな公務員のデザイン職の中から、佐賀県庁主導で運営している「さがデザイン」について取り上げてみたいと思います。
「さがデザイン」は、2017年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」を受賞しているとても有名な施策です。
この記事を読めば、公務員のデザイン職の方々がどんな仕事をしているか具体的にイメージできるようになるでしょう。
ぜひ、そんな公務員のクリエイティブの世界を覗いてみてください。
「さがデザイン」について
まず、「さがデザイン」とはどんな組織なのか、その概要について見ていきましょう。
「さがデザイン」については、初めて聞いた人もいるかも知れませんが、デザインを軸に運営をおこなっている佐賀県庁の庁舎内にある部署のことです。
「さがデザイン」の公式ホームページをみてみると、以下のような記載があります。
県政推進上の視点のひとつとして2015年度に誕生した「さがデザイン」は、思想であると同時に仕組みでもあり、その意義は単に「見た目をよくすること」ではありません。プロジェクトに関わる職員や県民一人ひとりの心地よさを大切に、計画段階から各課に寄り添い、共に解決方法を考え、表現やコミュニケーション、実施段階まで含めて、デザイン視点で磨き上げます。大切なのは、事業スキームを通して「コンセプトを大切にする」こと。デザイナーをはじめとした、様々な専門の領域に精通したクリエイターと協働しながら、ひとつひとつの事業を総合的にデザインしていきます。
ABOUT|さがデザイン (saga.lg.jp)
つまり、「さがデザイン」とはデザインの視点でデザイナーやクリエイターと協働して、佐賀県が抱える課題を解決するための部署であることが読み取れます。
設置場所は佐賀県庁内。
ということで、メンバーは「佐賀県 政策部 政策チーム さがデザイン担当」の方々が主体となって業務をおこなっています。
「さがデザイン」の3つのポリシー
「さがデザイン」には3つのポリシーがあり、公式サイトには以下のような記載があります。
1. 佐賀ゆかりのクリエイターと県庁各課をつなぐハブ(拠点)となること。
2. プロジェクトごとのコンセプトを大切にすること。
3. プロジェクトを進める上で、それぞれの事業スキームを整えること。
ABOUT|さがデザイン (saga.lg.jp)
コンセプトの立案をクリエイター主導ではなく、「佐賀県庁」「さがデザイン」「クリエイター」が三位一体となって、立案しているのは革新的ですね。
デザイン事務所やデザイン制作会社に発注を丸投げする組織も多い中、さがデザインでは自分たちが主体となって、コンセプトの立案から実施まで、クリエイターと協働で事業をおこなっています。
「さがデザイン」の役割
ここからは、「さがデザイン」が果たす役割についても見ていきましょう。「さがデザイン」が果たす役割は主に以下の8つです。
事業を推進していく各段階において、「さがデザイン」が様々な役割をになっているということが分かりますね。
一般的な公務員の部署で、ここまでの業務を一貫しておこなえるというのはかなり先進的です。
「さがデザイン」の執務スペース
さきほども少し触れたとおり、「さがデザイン」は佐賀県庁の庁舎内に新館の庁舎内にあります。
↓以下の佐賀県庁舎の配置図の2階部分をご覧ください。
展望 フロア | SAGA360(展望ホール) | 展望レストラン | 自動販売機 | |
---|---|---|---|---|
11階 | SAGAスポーツピラミッド推進局長・副局長室 | SAGAスポーツピラミッド推進グループ | SAGAサンライズパーク整備推進課 | SAGA2024総務連携チーム |
SAGA2024企画広報チーム | SAGA2024競技運営チーム | SAGA2024施設調整チーム | 行幸啓チーム | |
10階 | 農林水産部長・副部長室 | 農政企画課 | 生産者支援課 | 農業経営課 |
園芸農産課 | 畜産課 | 林業課 | 森林整備課 | |
水産課 | 海区漁業調整委員会事務局 | 外部監査人室 | ||
9階 | 産業労働部長・副部長室 | 産業政策課 | 産業DX・スタートアップ推進グループ | ものづくり産業課 |
コスメティック構想推進室 | 産業グリーン化推進グループ | 企業立地課 | 産業人材課 | |
労働相談室 | 流通・貿易課 | 農山村課 | 農地整備課 | |
8階 | 県土整備部長・副部長室 | 県土企画課 | 建設・技術課 | 入札・検査センター |
道路課 | 土地利活用課 | まちづくり課 | 下水道課 | |
河川砂防課 | 城原川ダム等対策室 | |||
7階 | 地域交流部長・副部長室 | 市町支援課 | 選挙管理委員会室 | さが 創生推進課 |
国際課 | 空港課 | 交通政策課 | 港湾課 | |
建築住宅課 | 施設整備室 | |||
6階 | 文化・観光局局長室・副局長室 | 税政課 | 行政デジタル推進課 | 文化課 |
文化財保護・活用室 | スポーツ課 | 競技力向上推進室 | 観光課 | |
私立・中高・専修学校支援室 | ||||
5階 | 政策部長・副部長室 | 総務部長・副部長室 | 政策企画監(政策・企画チーム) | 広報広聴課 |
財政課 | 法務私学課 | 人事課 | 行政経営室 | |
4階 | 知事室 | 副知事室 | 秘書課 | 来賓室 |
庁議室 | プレゼンテーションルーム | 危機管理センター | 特別会議室 | |
会見室 | ||||
3階 | 健康福祉部長・副部長室 | 医療統括監室 | 危機管理・報道局長室 | 危機管理防災課 |
消防保安室 | 報道課 | 健康福祉政策課 | 長寿社会課 | |
障害福祉課 | 就労支援室 | 医務課 | 医療人材政策室 | |
県政記者室 | 記者会見室 | がん撲滅特別対策室 | ||
2階 | 会計管理者・出納局長室 | 会計課 | 総務事務センター | 資産活用課 |
健康管理室 | ODORIBA (さがデザイン) | |||
1階 | 総合案内所 | 県民ホール | 行政の窓口 | 移住支援室 |
さが移住サポートデスク | 佐賀県のしごと相談室 | 国際課分室(旅券担当) | 佐賀県フィルムコミッション | |
佐賀銀行県庁支店 | 佐賀東信用組合県庁支店 | ATMコーナー | 警備室 | |
自動販売機 | ||||
地下1階 | SAGA CHIKA(地下ラウンジ) | SAGA TRACK(スポーツ展示) | ベビールーム | コンビニエンスストア |
自動販売機 | 地下1階駐車場 | (1階にあります北玄関の西側専用階段をご利用ください。) | ||
地下2階 | 地下2階駐車場 |
この執務室は「ODORIBA」という名称で、職員だけではなくクリエイターが集う場所になっていたり、作業や休憩スペース等として活用されています。
こちらは、株式会社オープン・エーという一級建築士事務所が手がけたワークスペースです。とてもオシャレな内装に仕上がっており、業務の効率も上がりそうですね。
OPEN 月-金
TIME 9:00-17:00
「さがデザイン」の取り組みについて
ここからは、「さがデザイン」の取り組みに代表的な取り組みについて、いくつか見ていきましょう。
紹介するプロジェクトは、デザインの醍醐味が味わえるとても素晴らしい取り組みばかりです。
- 佐賀県公式ポストカード
- SAGA BLUE PROJECT
- 県庁CLASS
- 歩こう。佐賀県。
佐賀県公式ポストカード
最初は、佐賀県公式ポストカードについてです。
こちらは、「さがデザイン」がプロダクトデザインのディレクションをおこない、これまでにない視点で佐賀県を切り取ったポストカード。
海外に住む外国人や、佐賀を訪れる外国人観光客に佐賀の魅力をつたえるべく、制作されました。
⇒ オンライン絵葉書サイト HERE WE ARE. 公式HP
SAGA BLUE PROJECT
「SAGA BLUE PROJECT」は”デザインのチカラで交通安全意識改革”をスローガンに、全国でも交通事故件数の多い佐賀県に対して提案されたプロジェクト。
佐賀の広々とした青空をイメージした『青』を基調に実施し、「ハード(交差点の環境整備等)」と「ソフト(意識醸成)」両面での相乗効果を狙っています。
YouTubeにも公式動画チャンネルがありますので、ぜひ見てみてください。かなり本気でデザインされていますね。
県庁CLASS
「県庁CLASS」は、社会科見学で県庁を訪れた小学生が楽しめる「教室」のような空間のことです。
「子供たちに佐賀のことや県庁の仕事・知事のことを楽しく学んでもらおう!」をコンセプトに、旧知事室や旧来賓室をリノベーション。
イラストやタッチパネルを使った解説動画を駆使することで、引率の先生からの評判も上々のようです。
歩こう。佐賀県。
「歩こう。佐賀県。」は、自家用車に依存したライフスタイルを改善するため、県民に新しいライフスタイルを提案するプロジェクト。
公共交通機関の利用促進や健康増進を促し、プロジェクトと連動したアプリを開発する活動もおこなっています。
佐賀県公式ウォーキングアプリ「SAGATOCO」を使えば、貯めたポイントを使ってSAGATOCO協力店でのサービスが利用可能です。
⇒ 歩こう。佐賀県。
「さがデザイン」で働くにはどうすればいいの?
ここまで「さがデザイン」の様々な取り組みついて見てきました。
ここまで読んでくれた読者の中には、この「さがデザイン」で働くにはどうすればいいの?と疑問に思っている人もいるかも知れません。
「さがデザイン」についていえば、佐賀県庁内の一部署という位置づけであるため、デザインに精通した専門の職員を雇っている訳ではなく、佐賀県庁の職員がその一翼を担っています。
そのため、純粋にこの「さがデザイン」で働くためには、佐賀県庁の公務新試験を受けて合格した後、「さがデザイン」への異動希望を出すという流れが一般的でしょう。
ただし、佐賀県庁の試験は純粋な公務員試験ということで、筆記試験や面接試験の比重は、クリエイティブ関連の公務務員試験とは比較にならないほど重いです。
また、いくら異動希望を出しても、必ずその部署に配属されるとは限りません。
もし、本気で受験を考えているのであれば、筆記試験対策や面接試験対策にも膨大な時間が掛かるため、それ相応の覚悟が必要でしょう。
⇒ (参考)佐賀県職員採用サイト
デザインの職種にこだわらなければ、「佐賀県庁」を受験するのもあり
いかかでしたでしょうか?
今回は佐賀県庁内にある「さがデザイン」という部署のお仕事について具体的に見てきました。
残念ながら、「さがデザイン」ではデザイン職の公務員を直接募集しておらず、ここで働くためには佐賀県庁の採用試験を突破する必要があります。
また、たとえ佐賀県庁の採用試験に合格できたとしても、必ず「さがデザイン」で働けるわけではないですし、必ずデザインに関連した業務に就ける訳ではありません。
ですが、デザインの職種にこだわらなければ、「佐賀県庁」の採用試験を受けるという選択肢も当然アリです。
佐賀県の公式ホームページを見てみれば分かると思いますが、他の自治体に比べ、デザインに対する意識がとても高いです。
デザインのチカラを尊重する意思は「さがデザイン」のみならず、すべての部署へ波及しています。
今回は、あくまでも公務員の「デザイン関連の部署を覗いてみよう」という趣旨で記事を執筆しました。
ぜひ、他の公務員のデザイン職の試験を受ける際の参考にしてみてください。
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