通常、デザインやクリエイティブの世界では、就職活動や転職活動の時にポートフォリオと呼ばれる作品集を面接時に提示することが求められます。
ですが、公務員のデザイン職においては必ずしもポートフォリオの提出を求められる訳ではありません。
というのも、公務員のデザイン職はあくまで「事務職」という枠組みであるため専門職や制作職の人材を求めている訳ではないからです。
ただ、もしポートフォリオがあれば、他の公務員のデザイン職志望者と圧倒的な差をつけられますし、デザイン・クリエイティブ枠の試験に多い「アピールシート」等を作成する時にも大きな手助けとなります。
ちなみに、このアピールシートはポートフォリオの簡易版のような様式で、公務員のデザイン職の試験ではほぼ必ず提出をが求められます。
自分自身の強みを客観的に把握するためにも、アピールシートの作成をスムーズにおこなうためにも、ぜひ自分のポートフォリオは作っておきたいところです。
今回の記事を読んで、ポートフォリオをどのように制作していけばいいかを理解しておきましょう。
デザイン関連の職種に必要なポートフォリオとは?
そもそも、デザイン関連の職種に必要なポートフォリオとは一体どんなものなのでしょうか?
Wikipediaの説明をみると以下のように記されています。
- ポートフォリオ – 英語由来のカタカナ語。書類を運ぶための平ケースの意味。
- ポートフォリオ (金融) – 単に投資家が所有する金融商品の組み合わせのこと(0でも1でも複数でもポートフォリオである。)。特にポートフォリオと明言する場合はリスクマネジメントのために複数の金融商品の組み合わせを示す。
- プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントにおいて、特定の資料や情報を指すために使用される。
- 自己アピールや商品アピールなどのために、主に実績をまとめた資料のこと。特に作家などが就職活動や自己の能力紹介などのために、作品集をまとめたものを指す。
このポートフォリオの定義を見ると、④が最もしっくりくる説明となっており、端的に言うと自分の手掛けた作品集のことを指しています。
例えば、デザインやクリエイティブの業界ではその人自身のスキルや能力を確認するために、ポートフォリオは必須のアイテム。
一方、公務員のデザイン職試験ではポートフォリオではなく、主に過去の実績や制作物を提示するためのアピールシートやエントリーシートの作成が必要となります。
ちなみにこのアピールシートは、カタチのある制作物に限らず今まで手掛けたプロジェクトや実績等、カタチの無いものを文章で記載することも可能です。
また、高岡市のアピールシートのようにプラスアルファの資料として写真や実績レポート、プレゼン資料などを提示することも可能です。
公務員のデザイン職は専門職や制作職ではなく、あくまでもクリエイティブに精通した「事務職」の募集を募っているため、このような違いがあるのでしょう。
そいうった意味ではポートフォリオの作成は必ずしも必要ではありませんが、ポートフォリオを作れるくらいのレベルに達していれば、アピールシートやエントリーシートの対策はバッチリです。
就活・転職活動でポートフォリオを作成するメリット
ここでは就活・転職活動において、ポートフォリオを作成するメリットについて今一度触れておきましょう。
冒頭でも触れたように、主な公務員のデザイン職の試験ではポートフォリオの作成は必須ではありません。
ですが、公務員のデザイン職を目指すにあたってポートフォリオを作成するメリットは大いにあります。
ポートフォリオを作成するメリットは以下の5つ。
- 自分の強みを客観的に把握できる
- 過去の実績を視覚的にアピールできる
- 情報を整理し、発信する能力が示せる
- 画像編集ソフトの操作方法が把握できる
- 併願先の自治体や企業を増やせる
1つめのメリットから順番に見ていきましょう。
自分の強みを客観的に把握できる
ポートフォリオは作品集という体裁にはなっていますが、最終的には自分の強みをアピールするためのツールになります。
過去の自分の作品や実績を収めるということは、どんなジャンルに自分の強みがあるのかを提示することと、ほぼイコール。
グラフィックデザインの分野を例に挙げてみましょう。
- ロゴ制作が得意な人
- 写真撮影が得意な人
- パッケージデザインが得意な人
- イラスト制作が得意な人
人によって様々な特性があります。
自分自身も最初はロゴデザインなどのジャンルが得意だと思っていましたが、過去に制作してた作品をかき集めてみると圧倒的に写真作品のクオリティが高いことが分かりました。
そこで初めて「ああ、自分は写真に関わるデザインが得意だったんだ」と腑に落ちた経験があります。
最初のうちは自分がどのジャンルが得意なのか判断するのが難しいと思いますが、いざポートフォリオを作り始めてみると客観的に自分の能力を把握できると思います。
過去の実績を視覚的にアピールできる
過去にどんなに輝かしい実績があっても、文章や口頭での説明やプレゼンだけでは限界があります。
もしポートフォリオがあれば、視覚的にどのような実績があったのか、どんな素晴らしい作品を手掛けてきたのかは一目瞭然です。
自分自身が相手にプレゼンする時も視覚的に表現できている部分は説明不要となるため、シンプルに説明やプレゼンをおこなえます。
もし、映像やWeb、音楽などのジャンルで実績がある場合は、ホームページや自身のSNSで情報発信をすることも可能でしょう。
情報を整理し、発信する能力が示せる
ポートフォリオを一度でもつくったことがある人であれば、単に過去の作品を収めるだけではテイストがバラバラになってしまい、中々まとまらないという経験をしたことがあると思います。
それもそのはず。
過去に作った作品は、その都度その都度、自分が興味ある分野で作った作品であったり、授業で出された課題であったり、友人から依頼されたコンテンツであったり。
このような作品をそのまま収めるだけだと、ジャンルも制作の過程もバラバラなのでまとまる訳がありません。
ですが、ポートフォリオに作品を収めようとすると圧倒的にプレゼンできるほどの作品数が少ないという人もいるでしょう。
あるいは、過去に作った作品が多すぎて全ての作品を収めようとすると結局何が得意なのか分からなくなってしまうため、ある程度作品を厳選する必要があります。
ポートフォリオを制作するということは、これらの情報を整理して情報発信する能力が求められるのです。
画像編集ソフトの操作方法が把握できる
ポートフォリオをしっかりと自分で作ろうとすると、ある程度画像編集ソフトの操作方法を熟知する必要があります。
有名な所でいうと、AdobeのillustratorやPhotoshop、In Designなどのグラフィック系ソフト、あるいは、Canvaなどの画像編集用ツールが有名ですね。
ポートフォリオをしっかりと作ろうとすると、ある程度どんな体裁にするかのフォーマット決めをおこなって作成していくことになります。
ただ、画像を配置して印刷するだけではなかなか完成度の高いポートフォリオにはなりません。
もし、オシャレでかっこいいポートフォリオの作成を目指すのであれば、ある程度、画像編集ソフトの使い方を学んでいく必要があります。
もちろん、お金を払って得意な人やサービスに外注するという方法も取れますが、それだと自分自身で制作したとアピールすることができなくなってしまいます。
ちなみに、僕が就職活動や転職活動をおこなっている時は作品の印刷までを自分でおこなって製本するところのみ外注していました。
自分が志望する職種や組織がどこまでの能力を求めるかによって、どこまでの範囲を自分で作りどこまでを外注するか使い分けていくとよいでしょう。
併願先の自治体や企業を増やせる
公務員のデザイン職で事務職に限って言えば、ポートフォリオの作成は必須ではなく、アピールシートの提出を求められることが多いです。
ですが、志望する自治体や職種によってはポートフォリオの提出が必須とされているところもあります。
また、公務員のデザイン職だけでなくクリエイティブに関連する企業を併願して就職活動や転職活動をおこなっている場合は、併願先を増やせるというメリットもあります。
基本的なポートフォリオの作り方
ここからは、基本的なポートフォリオの作り方について確認しておきましょう。
一般的なポートフォリオの制作順序は以下の通り。
- 作品の写真を撮って、データ化する
- 文章やキャプションを書く
- レイアウトをおこなう
- ファイル等に入れて整理する
- パッケージにする(製本orWebページ等)
それぞれの工程について、簡単に確認しておきましょう。
①作品の写真を撮って、データ化する
課題、自主制作作品、コンテストで入賞した作品の写真を撮ってデータ化しておきます。
この時点で作品点数が少ない場合は、自主制作などを積極的におこなって作品の数を増やしておきましょう。
また、他の作品と比べて明らかに完成度が低いものに関しては再度ブラッシュアップを施して、作品の質を全体的に上げておかなければなりません。
すべてデータ化しておけば、編集の際に並び替えや整理がしやすくなるでしょう。
②文章やキャプションを書く
自分の作品のタイトルやコンセプト、写真などにキャプションを入れて読む人が分かりやすいデザインとなるようにしておきましょう。
ちなみにキャプションとは、写真や図版のまわりに添えられる説明文のことを指します。
キャプションも長々と説明するのではなく、端的に作品のポイントを説明するに留めるよう心掛けておきましょう。
③レイアウトをおこなう
収める作品のテイストや志望先の企業や組織に合わせて、画像処理ソフトを使ってレイアウトをおこないます。
いきなりソフトをつかってレイアウトをするのが難しい場合、まずは手書きでスケッチをおこし、どこに写真や画像を入れて、どこにタイトルを入れるかの見通しを立てておきましょう。
また、ある程度の余白をとって目線や視線の動きなどを想定すると、なお完成度の高いポートフォリオになっていきます。
④ファイル等に入れて整理する
ポートフォリオの枠組みが決まったら、一度印刷をしてファイルに入れてみましょう。
前から順番にページをめくっていったときに単調で見る人が飽きないか、どうしたら自分の作品が魅力的に見えるのかを考える必要があります。
自分一人で判断できない場合は、身近にいる友人や家族、デザインが得意な人などに見てもらい、第三者からのアドバイスを取り入れると良いでしょう。
⑤パッケージにする(製本orWebページ等)
収めるコンテンツや作品の順番が決まったら、一度パッケージ化して全体の完成度をチェックしてみましょう。
自分が最初に想定していた時にイメージとズレていなければ、特に問題ありません。
ですが、自分が当初想定していたイメージとかけ離れてしまった場合は、どうすれば魅力的なポートフォリオになるのかを考えなければなりません。
技術的な問題なのか、使用している紙の質なのか、インクや発色の問題なのか、そもそも作品のレベルが一定水準に達していないのか…etc
あらゆる方向性から分析をおこない、ブラッシュアップを図ります。
紙とWeb、どちらのポートフォリオをつくるべき?
紙のポートフォリオとWebのポートフォリオ、どちらを作ってよいか迷っている人もいるでしょう。
結論からお伝えすると、両方作っておくのが吉です。
どうしても、時間的に、あるいは、技術的に作成するのが困難な場合は、せめて紙のポートフォリオだけでも用意しておきましょう。
Webのポートフォリオが無くても、書類やExcelでアピールシートの提出は可能なことが多いですし、面接時に紙のポートフォリオがあればプレゼンに対応できる可能性もあります。
ですが、やはりベストなのは両方の媒体のポートフォリオを用意することです。
ここでは、紙のポートフォリオとWebのポートフォリオ、それぞれの特徴について見ていきます。
紙のポートフォリオの特徴
紙のポートフォリオのメリットデメリットは以下の通り。
紙のポートフォリオの3つのメリット
- 環境に依存せずにいつでも自分の作品を提示できる
- 質感や印刷方法などのこだわりを表現できる
- 相手のWebリテラシーに依存せずに作品をみてもらえる
これらのメリットはWebのポートフォリオにはない紙のポートフォリオならではの特徴です。
紙のポートフォリオの3つのデメリット
- 持ち運ぶ際に、多少かさばってしまう
- プリンターなどの機器を用意したり、紙やインクに費用が掛かったりする
- 印刷会社などに外注する場合は、梱包や発送などの手間が掛かる
Webのポートフォリオに比べて、コストや手間が発生してしまうのが紙のポートフォリオのデメリットと言えます。
Webのポートフォリオの特徴
Webのポートフォリオのメリットデメリットは以下の通り。
Webのポートフォリオの3つのメリット
- 基本的に相手のデバイスから自由に見もらえる
- 経歴書等に自分のURLやSNSを記載できるのでアピールしやすい
- 紙やインクなどのコストが掛からない
これらのメリットは紙のポートフォリオにはないWebのポートフォリオならではの特徴です。
Webのポートフォリオの3つのデメリット
- Webのポートフォリオを作成するためにはある程度のスキルが必要
- ポートフォリオサイトを管理するためにサーバーやドメイン代などのコストがかかる
- 環境によっては目の前の相手にすぐに作品を見せられない
紙のポートフォリオに比べて、ある程度のスキルが必要とされるのがWebのポートフォリオのデメリットと言えます。
参考になるポートフォリオサイト・動画・書籍など
ポートフォリオはいざ作ろうとしても、なかなか作業が先に進みません。
どんな作品を収めるのか、写真やレイアウトはどのような構成にするのか、順番やフォントの選択、表紙やパッケージのデザインなど、決めなくてはいけないことが山ほどあるからです。
自分の頭でイチから考えるのはもちろん大事なことですが、他の人がどんなポートフォリオを作成しているかを知ることで、新たなアイデアが生まれる可能性もあります。
そこで、ここからはポートフォリオを制作するにあって参考になりそうなサイト・動画・書籍などをいくつかご紹介します。
- ポートフォリオに関するWebサイト
- ポートフォリオに関する動画
- ポートフォリオに関する書籍
ポートフォリオに関するWebサイト
ここでは代表的な2つのサイトをご紹介します。
- VIVIVIT
- マイナビクリエイター
はじめに紹介するサイトは、デザインやアート分野に特化した「VIVIVIT」というポートフォリオサイトです。
VIVIVIT
こちらのサイトはデザイン業界を目指し、内定を獲得した学生や社会人などのポートフォリオを紹介している、とても参考になるサイトです。
マイナビクリエイター
2つめにご紹介するのは「マイナビクリエイター」という転職エージェントサイトのポートフォリオ記事です。
ここでは、ポートフォリオに入れる5つの要素を特集した記事にリンクを貼っていますが、他にもポートフォリオに最適なページ数や作品、著作権と守秘義務の範囲などの記事を読むことができます。
ポートフォリオに関する動画
ポートフォリオの作成に役立ちそうな動画も2つ紹介しておきましょう。
- ぱちぱちデザインChannel
- クリ博ダイレクト
ぱちぱちデザインChannel
まずは、ぱちぱちさんというデザイナーの方が運営しているYouTube動画です。
ポートフォリオには何を入れたらいいのかをポイントを絞って解説してくれているので、ぜひ参考にしてみてください。
クリ博ダイレクト
2つめの動画は「クリ博ダイレクト」という、クリエイターやエンジニアの仕事に就きたいと思っている人と企業を繋げる無料の就活支援サービスをおこなっているサイトです。
こちらもどんなポートフォリオが企業や採用担当者に評価されるのかを解説しているので、ぜひ一度見て頂ければと思います。
ポートフォリオに関する書籍
最後に、ポートフォリオに関する書籍を2つほどご紹介しておきましょう。
- デザイン・クリエイティブ業界を目指す人のための ポートフォリオ見本帳
- 採用担当者の心に響くポートフォリオアイデア帳
デザイン・クリエイティブ業界を目指す人のための ポートフォリオ見本帳
1冊目にご紹介するのは、『デザイン・クリエイティブ業界を目指す人のための ポートフォリオ見本帳』という書籍です。
こちらの書籍は、実際に内定を勝ち取った実例32点のポートフォリオが掲載されており、本の中身やサンプルなどがAmazonのページからも参照できます。
採用担当者の心に響くポートフォリオアイデア帳
2冊目にご紹介するのは、『採用担当者の心に響くポートフォリオアイデア帳』という書籍です。
こちらの書籍は業界別にどんなポートフォリオが作成されたか、実例を50点挙げて掲載しています。
ぜひ参考にしてみてください。
ポートフォリオを作って就活・転職活動を有利に進めよう!
ここまで、就職活動や転職活動でポートフォリオを作成するメリットと作り方について見てきました。
デザイナーやクリエイターなどの制作職を目指すのではなく、公務員のデザイン職を目指すにあたっては必ずしもポートフォリオの制作は必須ではありません。
ですが、ポートフォリオを作成することで得られるメリットは公務員のデザイン職を目指すにあたっても、充分に効力を発揮します。
ポートフォリオを作成することで自分の強みを発見できたり、情報を整理して発信する力が付いたり、画像編集ソフトのスキルを向上させたり…あらゆることにメリットがあります。
他の人には無い自分だけのポートフォリオを作って、就職活動や転職活動を有利に進めていきましょう!
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