デザイナーから事務の仕事について、初めて僕が気づいたことを書きたいと思います。
デザイン業界にいた当時の僕の価値観は「好きな仕事をすることが一番の幸せであり、お給料は二の次」という考え方に支配されていたと言っても過言ではありません。
もらった給与明細も見るたびに、何だか税金って高いなー。位の認識しかなかったのですが。
デザインの視点から見ると、いくつか様々なことに気付いたりします。今日は、そんなデザイン的な視点から今の事務仕事を見て行きたいと思います。
デザイン会社時代の裁量労働制と、現在の事務仕事についての比較
以前、会社から貰ってた扶養控除申告書や保険証については、法律や規則によって様々な制約があるということを知り、普段何気無く使っていたり、見たことのある書類が非常に重要なものであったことに気づいたのです。
デザイナーの仕事は基本、裁量労働制の概念の中で働いているため、残業という概念で考えづらいところもありますが、一般的な会社員や公務員の方は、時間外勤務や超過勤務、という概念のもと働いています。
一般的には残業をすればするほど、休日出勤をすればするほど、残業代や時間外の勤務手当がお給料がつくという形になっています。
昨今は長時間に及ぶ残業時間が働いている人の心身を蝕むことが医学的に判明しているため、労働基準法などで過度の残業はしないようそれぞれの会社や組織で工夫が凝らされれています。
過去、デザイン業界で僕が働いていた頃には、誰もそのような概念を主張する人はいなかったし、そもそも、※裁量労働制という概念のもとで働いている場合、残業することは仕事が遅いか、自分が好きで残業しているとみなされてしまうことが常態化していました。
※裁量労働制については、以下のリンクに非常にわかりやすく書かれていますので、参考にして見てください
この制度のもとでは、1日の労働時間をみなし労働時間としてカウントされてしまい、何時間働こうとも、8時間分の労働とみなされてしまうというデメリットがあります。
逆にメリットとしては、例えば4時間分の勤務でも8時間分の勤務としてみなされるということでもありますが。一般的な会社勤めのデザイナーで、毎日少ない労働時間で帰れるという話を僕は聞いたことがありません。
通常であれば、この概念のもと、良いアイデアすぐに出た、仕事が早く終わったという場合、早めに帰宅してその後の時間は自分で自由にできるはずですが…。実際の所は、そのような仕組みにはなっていない所の方が多いのではないでしょうか?
この裁量労働制という概念自体はとても画期的なものだと思いますが、人を雇う側が悪用しようと思えば、いくらでも、雇用した人材を働かせたいだけ働かせることが出来る、ということでもあります。
つまり、デザイナーを雇う側がキャパシティを超える業務量を与え、働かせるだけ働かせて、残業代を支払うことなく、その人が潰れるまで、こき使うこともできてしまうということです。
これって、かなり恐ろしい制度ではないかと、僕は思うのです。通常の会社員や公務員であれば、残業を課された時に雇用者が残業代を支払わないというのは違法ということになります。
ところが、この裁量労働制を用いて、雇用者と労働者が契約してしまった場合、もしその会社がブラック企業であった場合、合法的に残業代を支払うことなく、労働する人をボロボロになるまで使い捨てる可能性があるということです(怖)
全部が全部、そういう会社でないということは書き加えておきますが、自分が経験したデザイン会社のように、世の中にはそのようなひどい会社もあるということは伝えておきたいと思います。
一方で、きちんと制度のことを理解してくれて、労働する人のことを大切に思ってくれている会社であれば、この裁量労働制を用いて、従業員が働きやすい環境を構築してくれているはずです。(基本的には仕事が早く終われば終わるほど、早く帰ってもいいというメリットもあるはずなので)
新卒の時にはあまり意識していませんでしたが、自分がもし今、転職を検討する場合、検討材料としてその企業がどのような雇用体系になっているかは必ずチェックすると思います。
デザイナーの時のお給料と、事務職の時のお給料について
デザイン学校を卒業後、僕が最初に就職したデザイン会社のお給料は、その当時手取りで16万円ほどでした。家賃や光熱水費、食費、携帯代などを考慮すると僕の手元に残るお金はほどんどありませんでした。
食費も切り詰める必要があったため、朝と夜は、1回300円以内に抑えないと1ヶ月のやりくりができなかったこと、残業や長時間労働が重なっていたため、自炊をするにしても限界がありました。
そのため、少し贅沢をしても牛丼屋の朝メニューやパウチのゼリーなど、時間のかからない食事を取ることが多くなって行きました。
夜もほとんど夕飯の時間には帰れないため、コンビニ弁当が多くなるなど、かなり身体に悪い生活を繰り返す日々。深夜に帰宅することも多くなっていたため、胃腸が弱り、うまく食べたものを消化できず、段々と身体も痩せ細ってしまいました。
このような生活習慣を繰り返していると、当然、僕の意志よりも先に、身体の方が悲鳴を上げ、心身とも限界を迎え、身体を壊すことになります。また、パワハラも受けていたため、精神的にも限界を迎え、離職に至ったわけです。
一方で、今の事務職の仕事に関しては、規則正しい生活の典型ともいえるかもしれません。毎日決まった時間に起きて、朝ごはんを食べて、仕事に赴き、残業がない限りは毎日、夕飯の時間には帰宅することができます。
事務職の年収の方はデザイナー時代よりも良いお給料をもらうことできました。理由として、いわゆる年2回のボーナスの算定が入ることと、きちんと時間外の残業手当が支給されていたからです。
デザイナーとして働いていた時は、あまり景気が良くなかったことも起因してボーナスも減ることの方が多かったですし、業績によっては必ずしも年2回満額もらえるとも限りませんでした。残業代も皆無であった、と言っても過言ではありません。
デザイン会社では、例えば、2ヶ月分のボーナスをもらえるはずが業績が悪いということで、1ヶ月未満の時もあったからです。
一方で、今の事務のお仕事では、よっぽどのことがない限り、毎年満額に近いボーナスを年2回もらうことができています。景気に左右されない業種というのもありますが。(今後どうなるか分かりませんが、比較的業績が安定している職場と言えます)
また、労働時間もデザイナーとして働いている時よりは少ない労働時間ですし、年収としてはデザイナーの時の年収を遥かに超えています。
そのような事実を目の当たりにすると、最初に僕が示した「好きな仕事をすることが一番の幸せであり、お給料は二の次」という概念がガラガラと崩れ去っていったのです。
正確には、実際に事務の仕事について当初の自分の価値観が崩壊したといっても過言ではないと思います。
転職活動ではワークライフバランスを意識した活動を行ってはいたものの、実際に転職をして見て、ここまでお給料や待遇が違うものなのか、というのをはっきりと認識した瞬間でした。
自分が一番好きなことを、仕事にしないという選択の意味
以上見てきたように、僕はデザイナーとして働くことができなくなってしまい、ほかの職業を模索することになってしまったのです。
その際にワークライフバランスを意識したのは言うまでもありませんが、長く働き続けることの職場。と言うのも重要なポイントでした。
理由は簡単です。二度と自分の身体を壊すような働き方をしたくなかったからです。幸い今の職場では、過度な残業も休日の無駄な出勤もありません。
終電で帰ることも年に1回あるか無いかですし、徹夜をすることは皆無です。身体も方も段々と健康になって行き、ようやく健康な状態に戻りつつあります。
ただ、きちんと自分で意識して働き方を考え、効率よく仕事を進める努力をしていかないと、デザイナーの時の二の舞を踏むことになってしまいます。
今のところ、パワハラと呼ばれるような被害には遭遇していませんが、遠くの方の違う部署では度々パワハラや病気になって休職している人がいると言う話を耳にします。
やばい上司がいたら全力で逃げる、自分ができない量の仕事は勇気を持って断る、など、とにかく自分のことを守る姿勢が最も大事とも言えます。
ただ、仕事にやりがいはあるかどうかと問われると、デザイナーとして働いている時の方が遥かにやりがいはありました。
これは致し方のないことだと思うのですが、こればっかりは、事務仕事でやりがいを探すと言うことの方が難しいかもしれません。
なぜなら、少しきつい言い方をするならば、事務仕事は誰がやってもできる仕事と言えるものの典型だからです。その中で、社内で自分にしかできない役割を探すと言うことになるのですが…。
やはりデザイナーのアイデアや表現のように、唯一無二の仕事とは言えないというのが本当の所です。ただ、決まった時間に業務が終わると言うことは、そのあとのプライベートの時間を自由にできると言うことのメリットの方が大きいと言えます。
実際、僕はその時間を使ってコンテストや自分の作品作り、インプットやアウトプットの作業を行っています。
そうすると
- 仕事はお金をもらって社会勉強ができる時間、難易度の高いゲームをクリアしてる時間
- 仕事から切り離されたプライベートは自分のデザイン能力を上げるための時間
と言うように考えることで、自分の中の価値観を少しずつ変えて行きました。そうすることによって、不思議と仕事そのもののストレスを軽減することもできるし、好きなデザインの時間も確保することができます。
皆んながみんな、このような考え方を受け入れられるとは思っていませんが、選択肢の1つとして自分のような職業選択をする道もあると言うことをお伝えしたく、今回この記事を執筆することにしました。
少しでも自分の体験が参考になれば嬉しいです。
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