今回はいつもと趣向を変えて、僕がクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの授業を受けたときのお話をしたいと思います。
可士和さんと言えば、ユニクロ、セブンイレブン、TSUTAYA、くら寿司などの大企業のコンサルティングをおこない、数々の課題をデザインの力で解決していくクリエイティブディレクター。
本人のことはあまり知らないという人でも、手掛けた作品やロゴマークは毎日必ず一度は目にするほど街中にあふれています。
デザイン業界にいる人であれば、顔を合わせる機会は多いのかも知れませんが、普通に会社員として生活しているとなかなか会う機会はありません。
ですが、社会人や学生でも通えるデザイン講座には、著名なクリエイティブディレクター/アートディレクター/デザイナーの方を講師として呼んで、授業をしてくれる講座もあります。
今日は、そんなデザイン講座で過去に僕が佐藤可士和さんから直接デザインの授業を受けたお話をしようと思います。
デザイン業界では超有名、佐藤可士和さんってどんな人?
僕の体験談を書く前に、少しだけ佐藤可士和さんのプロフィールをご紹介。そんなの既に知ってるよ!という人は飛ばして読んで頂いて構いません(笑)
ここで僕が色々と書くのもあれなんで、公式ホームページに記載されているプロフィールを引用したいと思います。
佐藤可士和
クリエイティブディレクター
ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発まで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュースなど。近年は日清食品関西工場や武田グローバル本社など、大規模な建築プロジェクトにも従事し、「ユニクロパーク横浜ベイサイド」「くら寿司浅草ROX店」は、特許庁による日本国内初となる内装意匠に登録された(2020年11月)。また、文化庁・文化交流使としても活動し、日本の優れた文化、技術、コンテンツ、商品などを海外に広く発信していくことにも注力している。
引用:KASHIWA SATO – CREATIVE DIRECTOR / SAMURAI INC. TOKYO
うん、肩書を見ただけでも物凄い人ですね。
ちなみに僕がデザインの授業を受けていた当時の肩書はアートディレクターでしたので、今なお更に活躍の場を広げているということですね。
当時授業を受けていた時のリアルタイムの作品は、明治学院大学のロゴマーク、スーツセレクトのロゴマークなどでしたが、今なお、そのロゴが使われているというのも感慨深いものがあります。
こんなすごい人から直接授業を受けることができたのが今でも信じられないのですが、この経験があったからこそ今のデザインの能力が培われました。
ここでは紹介しきれないほど、いろいろと活躍されている方なので、興味がある人は公式ホームページやYouTube動画等もぜひ参考にしてみてください。
代表的な作品
もう説明する間でもないですが、これらのロゴマークを見てもわかる通り、日本を代表するありとあらゆる企業の課題を解決しています。
おそらく、この中のロゴマークならどれか1つ以上は必ず街中で見たことがあるのではないでしょうか。
それくらい可士和さんが手がけた作品は私たちの日常生活に浸透しています。
「佐藤可士和展」について
最近では、東京の国立新美術館で「佐藤可士和展」が2021年2月3日から4月24日まで開催されました。
僕自身もこの展覧会を見に行きましたが、コロナ禍にもかかわらず沢山のお客さんが足を運び、会期途中での閉幕にもかかわらず累計入場者数15万人超の人気を博したそうです。
展覧会自体は何もかもがスケールが大きく、今までに無いくらいインパクトのあるものでした。
会期の途中で閉幕にならなければ、二度、三度と足を運んで見に行きたい展示だったのですが。
新型コロナウイルス蔓延防止措置のために会期途中で閉幕となってしまったのです。
もし、またどこかで開催される機会があれば是非とも見に行きたい展覧会の1つですね。
「私も見に行きたかった!!!」
という人のために、公式ホームページに展覧会の概要が記されたページが残っていましたので、こちらにも記載しておきます。
現在も進行中のプロジェクト
現在も進行中のデザインプロジェクトとして、「団地の未来プロジェクト」というものがあります。
こちらは、今ある団地の未来を切り開くために数々の課題をデザインの力で解決していくプロジェクトです。
このプロジェクトをみてると、「団地ってここまでオシャレに生まれ変われるのか!」と、とても驚きの内容。
ロゴマークや建築のデザインにも、きちんと意味があって、すべてのものが一貫性を持ってつくられていることに感嘆します。
他にもたくさんのプロジェクトを同時並行しているはずですが、あまりにも多すぎるのでここではこのプロジェクトの紹介のみに留めておきます。
もし、興味のある人はまたいろいろと調べてみると面白いでしょう。
佐藤可士和さんとの最初の出会いは広告デザインの講座
さて、ここからは僕が最初に佐藤可士和先生にお会いした時の話を綴っていきます。
きっかけは、「広告批評」という雑誌の中で募集していたデザイン講座でした。
※ちなみに「広告批評」は既に廃刊となっており、今現在は発売されていません。中古書店などでバックナンバーは手に入るようなので、興味がある方は読んでみてください。
当時、『一般コース』と総合コース『月組(コピーライティング中心)』/『星組(CMプランニング中心)』/『虹組(広告デザイン中心)』のそれぞれの有料講座があり、僕はその広告デザイン講座を選んで受講しました。
期間ごとに4人のアートディレクターの方が講師となって、授業をしてくれるというスタイルです。
ちなみに、当時の広告デザイン講座の他の3人の講師の方は、秋山具義さん、永井一史さん、青木克憲さんでした。佐藤可士和さんは、その中の1人ということですね。
第一印象について
第一印象ですが、写真で見ていた時よりもだいぶ感じのいい喋り方をする人なんだ!と思いました。(←失礼!)
というのも、当時の宣材写真は、ちょっと目つきが鋭い感じで、少し怖い印象があったからです。
ですが、実際そんなことはなく、すごく人当たりの良い人で、誰にでも気さくに話しかけてくれるような人でした。
授業の進め方も丁寧で、とても分かりやすく説明してくれました。
ちなみに、その当時作っていた名刺も貰っちゃいました。サムライ事務所のカッコイイロゴが入った名刺で、今でも大事に取ってあります。
講座の内容
講義の内容ですが、その時の課題は、
「広告批評」の雑誌のタイトルロゴをデザインしてください
という内容でした。
ですが、実際にその場でデザインするわけではなく、次の授業までに作品をつくって持ってくるというスタイルだったので、基本的にはほとんどの人がパソコンの操作に堪能でした。
というのも、「広告批評」というマニアックな業界誌を読んでいる読者層なので、ほとんどの人がプロのデザイナーかアートディレクター。
ちなみに、僕はその時、大学を卒業したあとに通っていたデザイン専門学校の学生でした。
プロの人に交じって、作品を発表しなければならいのでとても緊張。
その一方で、会社員の方、一般の大学生や美大生も多く受講していたので、和気藹々と楽しく授業を受けていました。
自分の課題作品の評価
デザインについては、違う方向性から3案ということだったので、当時の自分も一生懸命アイデアをひねり出して作成した記憶があります。
3案と言っても、その3案を出すために何十案、何百案とボツにしたアイデアもあるので、かなり苦労しました。
その中で、「これならいける!」
という会心のデザインができたので、プレゼンの当日にそれを印刷して持っていきました。
で、結果はどうなったかというと。
会心の一撃のその1案は、かなり良いコメントを貰えました。
少し蛇足的なデザインが施されていたので、「そこを改善すればもっとよくなるよ」というアドバイスでした。
その時に、「ああ、デザインをそぎ落とすって、こういうことか!」と実感したことを今でも鮮明に覚えています。
可士和さんのデザインを見ればすぐに分かるように、無駄なものを一切排除。
そぎ落とせるところまでそぎ落として、強烈なインパクトを持つデザインに仕上がっています。
プロの人から直々にアドバイスを貰える機会は滅多になかったので、その当時は食い入るように他のひとの作品や講評について一言一句聞き逃さないよう授業に集中していました。
講座から学んだこと
このデザイン講座の授業で僕は沢山のことを学びました。
プロのアートディレクターやデザイナーの人と同じ土俵で授業を受ける中で、無理矢理にでも食らいつこうと必死にデザインを考えることで精一杯でした。
他の人の作品も、自分と同世代の友人の作品とは、レベルもクオリティも段違い。
見事に心が折れかけましたが(苦笑)、それでも何とか最後まで粘りに粘って、全ての課題をクリア。
で、振り返ってみて最も勉強になったのは、
「プロのアートディレクターの思考過程をトレースできたこと」
でした。
授業中も、プロの人の思考を必死で追いかけて
「可士和先生だったらどんな風にデザインするだろうか?」
と、何度も自問自答を繰り返しながら課題をこなす日々。
一番印象に残っていた言葉が、可士和先生の
1本、線を引くだけでも、なぜその線が必要かを必ず考えなければならない。
というお言葉でした。
当時、余白があれば何となく線を引いたり、スペースを埋めていた自分には衝撃のコメントでした。
そうか。。。線を1本引くだけでも、意味を考えなければならないんだ…と。
それからは、何か素材を入れたり、描画を塗り足すときには、「このデザインに意味はあるのか?」ということを考えてからデザインするようになりました。
佐藤可士和さんとの2度目の出合いは、デザイン本の出版記念イベント
2度目の出会いは、佐藤可士和さんの本の出版記念イベントの時。
本も著者の思考過程を辿るにはとても参考になるので何度も読み直して、自分のデザインに活かせるところはないかを必死で探していました。
で、たまたまサイン会に行ける機会を得たので、再会した時に「広告批評のデザイン講座ではお世話になりました」と軽く挨拶をしながら会話をしたのですが。
なんと!
自分の作品を覚えていてくれたのです!!
これは、とても嬉しかったです。世の中には忘れられていく作品や、記憶に残らない作品も沢山あるので、とても感慨深かったです。
あの時、真面目に課題をやっててよかったーーー、と思えた瞬間でした。
佐藤可士和さんのデザインの授業をYouTube動画で体験してみよう
ここまで読んでみて、
佐藤可士和さんの授業を私も直接受けてみたい!
という風に感じた人もいるでしょう。
ですが、なかなかそうった講座は見つからないですし、直接講義を受けるとなると、ある程度デザインの素養がある人でないと受講できないこともあります。
そこで、代替案として佐藤可士和先生の授業を体験できるYouTube動画をご紹介します。
有田工高デザイン科の特別授業
1つにご紹介するのは、有田工高デザイン科の特別授業です。(上)と(下)に動画が分かれているので、ぜひ視聴してみてください。
高校生向けの授業ですが、大人が聞いてもとても勉強になります。
OCHABIジュニアスクール主催のデザイン教育シンポジウム
2つ目はOCHABIジュニアスクール主催のデザイン教育シンポジウムです。
こちらは、OCHABI junior school 受講生とその家族・関係者を対象としたものですが、一般向けにもYouTubeに公開されていました。
内容自体は子ども向けのものですが、大人でも気付かなかいデザインの大事な視点を講義とワークショップ形式で体験できます。
過去には多摩美術大学の講義なども配信されていた
今は、視聴できなくなっているようですが、過去には多摩美術大学などでおこなわれていた講義もYouTubeで視聴できていました。
何年も前の動画なので、今は見れなくなっているのですが、不定期でこのような動画がアップされているので、時々チェックしておくと良いでしょう。
僕の記憶で覚えてる限りでは、当時、ユニクロがアメリカに進出する際に、どのようなデザイン戦略を取ったかという内容だったと思います。
こちらの授業も、プロの思考過程をたどることができたという意味ではとても貴重な講義でした。
佐藤可士和さんのような、プロのデザイン思考過程をトレースしてみよう
ここまで、僕がクリエイティブディレクター佐藤可士和さんの授業を受けたときのお話を書いてきました。
もし、この記事を読んでみて
「自分も、プロの人から直接講義を受けてみたいなあ」
と思った人は、講座を探してぜひチャレンジしてみてください。
どうやって探したらいいか分からないよー、という人は、まずはどこかの展覧会の講演会イベントを探してみると良いでしょう。
美術館などの企画展では、出品している作者が生存している場合、
「どういった意図で作品をつくったのか?」
を制作者本人が解説する講演会等が企画されることも多いです。
作品をみるだけでなく、制作者本人からの話を聞けると、作者の思考過程をトレースできるので、とても勉強になります。
もし、そのようなチャンスが巡ってきたら、ぜひ直接聞きに行ってみましょう!
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