「お笑い芸人からデザインを学ぶなんて、ありえるの?」
そんなふうに思った方もいるかもしれません。

でも実は、お笑いの世界には、デザインの本質に通じる“伝え方”の技術が凝縮されているのです!
私は元グラフィックデザイナーで、今は事務職として働いています。
現職では資料作成や掲示物のデザインを担当することもありますが、毎回意識しているのが
「情報をどう見せるか」
「どこに意図を込めるか」
という視点です。そうした“見せ方”を考える中で、ふと気づいたのです。
「これ、芸人さんがネタを考えて披露するのと同じじゃない?」
お笑い芸人は、アイデアを練り、伝え方を工夫し、観客の反応を読みながら届け方を磨いています。
これってまさに、デザイン初心者が「伝えるデザイン」を学ぶ上でのヒントが満載だと思いませんか?
デザインの勉強というと小難しい本や、アプリの操作方法を一生懸命覚えることを思い浮かべます。
ですが、普段テレビや舞台で見ているお笑いの仕組みや流れを掘り下げるだけでも、デザインの勉強になります。

この記事を読めば、お笑い芸人の視点から「伝わるデザイン」のヒントが見つかるでしょう。
「ネタづくり」と「デザイン思考」は、そっくり

お笑い芸人の仕事は、大きく分けて2つに分類できます。
- ネタを考える=アイデアを形にする力
- ネタを演じる=観客に伝えるプレゼン力
この構造は、まさにデザイナーが仕事をする流れと同じです。どちらも「アイデアを出して、それをどう伝えるか」に尽きます。
- 何を伝えたいか(ボケ)
- どう伝えたら伝わるか(構成・ツッコミ)
- 相手にどう受け取ってほしいか(オチ)
お笑いとは、「人の感情を設計するコミュニケーション芸術」であり、デザインもまた「視覚で伝えるコミュニケーション技術」なのです。
分野は異なるものの、本質的にやっていることは実は同じなのです。
お笑いとデザインの3つの共通点

ここで、お笑いとでデザインの3つの共通点を整理しておきましょう。
- 見せ方が9割を決める
- 間や余白で空気を生む
- 構成力こそ、伝える技術の核心
見せ方が9割を決める

ネタの内容そのものが大事なのはもちろんですが、芸人がいちばん時間をかけるのは、「どう言えばウケるか」という部分。
たとえば…
- 同じボケでも、言葉を一文字変えるだけで笑いが取れる
- オチの一言を「1秒遅らせる」と爆笑が起きる
- セリフの“置き方”で、空気が変わる
これらは、まさに見せ方の設計です。デザインでも同じことが言えます。
- 色の順番を入れ替えるだけで、情報の印象が変わる
- グラフを棒→円にするだけで、納得感が変わる
- 「伝えたい言葉」をどこに配置するかで、見る人の理解が変わる
「内容をどう見せるか」にこだわる姿勢は、芸人もデザイナーも共通しています。
間や余白で空気を生む

お笑いでは「間が命」とよく言われます。“ボケのあと、絶妙な沈黙”があるからこそ、笑いが生まれる。
- 早すぎても笑えない
- 遅すぎても冷める
- 絶妙な間で、観客に“想像させる”時間を与える
この“緊張と緩和”の設計は、まさにデザインの余白と同じ効果を持っています。
余白には、次のような役割があります。
- 目を休ませる
- 視線を誘導する
- 情報の区切りをつくる
- 「強調したいこと」を際立たせる
つまり、余白は「沈黙」ではなく「演出」なんです。
情報の“置きどころ”と“置かないところ”のバランスを取るという意味では、芸人の間合いとデザイナーのレイアウト設計は驚くほど似ています。
構成力こそ、伝える技術の核心

芸人のネタには、必ず「フリ」と「オチ」があります。
- フリ=共感できる日常の描写やあるある
- オチ=それを裏切る意外な展開
観客の頭の中に「こうなるだろう」という仮説を立てさせて、それをうまく裏切る。だからこそ、笑いが生まれる。
これはプレゼン資料にも応用可能です。
- 問題提起 → 解決策提示 → 実例 → まとめ
- 比較 → 選択理由 → 推奨 → エモーショナルな結論
これらの流れは、芸人のネタ構成と同じ「起承転結」を備えています。資料は、ただの情報の羅列ではなく、物語なんです。
実例解説|芸人別に見る「伝える技術」

ここからは、今活躍しているお笑い芸人のテクニックから「伝える技術」の内容について見ていきましょう。
ここでは、今、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している千鳥、オードリー、かまいたちの伝える技術を例に見ていきます。
- 千鳥|ツッコミはユーザーの声を代弁する
- オードリー|余白とリズムの間の美学
- かまいたち|「共感→裏切り」の構成力
千鳥|ツッコミはユーザーの声を代弁

たとえば、ノブの
「クセがすごい!」「なんでやねん!」
というツッコミは、実は観客の違和感を言語化する役割を果たしています。
これをデザインに置き換えると、「ユーザーの声に代弁者として応える」という視点になります。
- 使いにくいレイアウトを見直す
- 想定質問に答える注釈を加える
- 複雑な図解をシンプルにする
ノブ視点を取り入れることで、見てくれる人への配慮が宿るデザインになります。
※千鳥…大悟とノブによるお笑いコンビで、吉本興業に所属しています。岡山県出身の同級生コンビで、方言を生かした独特の掛け合いが特徴です。「クセがすごい!」などのキャッチーなフレーズで人気を集め、全国的にテレビ番組やCMなどで活躍しています。
オードリー|余白とリズムの間の美学

春日の「間」と若林の冷静なボケ回収には、明確なリズムがあります。
笑いのリズムは、心地よさの設計です。そして、それはデザインでも応用可能。
- テキストと図の配置に緩急をつける
- 見出しに強弱をつけてテンポを出す
- 強調を一点に絞って、リズムを生む
単調にならないプレゼン資料は、リズムのある会話のようなデザインになるのです。
※オードリー…若林正恭と春日俊彰によるお笑いコンビで、ケイダッシュステージに所属しています。高校の同級生コンビで、若林の鋭いツッコミと春日の独特なキャラ「トゥース!」などのギャグでブレイク。テレビ・ラジオ・CMなど幅広く活躍しています。
かまいたち|「共感→裏切り」の構成力

かまいたちのネタは、誰もが共感できる状況から始まり、予想を裏切る展開で笑わせます。
デザインでも同じように、
- 誰でも理解できる導入
- 一見ありえないアイデアや仕掛け
- 思わず「なるほど!」と感じるまとめ
この感情の上下動があるからこそ、お笑いも資料も印象に残るのです。
※かまいたち…山内健司と濱家隆一によるお笑いコンビで、吉本興業に所属しています。漫才とコントの両方を得意とし、独特な設定やクセの強いキャラで人気を集めています。関西での活躍を経て全国区となり、テレビ・YouTubeなど多方面で活躍中です。
お笑いをデザインに応用する3ステップ

ここからは、実際にお笑いの伝え方をデザインに応用する3ステップについて見ていきます。
- ネタを観察する目を養う
- ツッコミ視点で“ノイズ”を見つける
- 「型」を資料構成に応用してみる
① ネタを観察する目を養う

普段あまり意識していないと思いますが、ネタを見て「なんで笑ったのか?」を分解してみましょう。
- どんな順番で話していた?
- どこで笑いが起きた?
- オチにどうやってつなげた?
これは、「情報の流れ」を観察する訓練になります。
お笑いは感覚的なものと思われがちですが、構成は非常にロジカルです。
この視点を持つと、どんなチラシやスライドを見ても「なぜこの順番なんだろう?」と気づけるようになります。
② ツッコミ視点で“ノイズ”を見つける

自分のデザインに、あえて「ツッコミ」を入れてみましょう。
- この色、本当に必要?
- 説明飛びすぎじゃない?
- 目立たせすぎて逆に読めてない?
これはまさに“ノブになる”訓練です(笑)。
ツッコミの視点があれば、情報の過不足や配置ミスに自分で気づけるようになります。
③ 「型」を資料構成に応用してみる

お笑いには「型」があります。たとえば、「フリ → ボケ → ツッコミ」の三段構成。
この型をプレゼン資料に応用すると、自然な流れが生まれます。
お笑いの型 | プレゼン資料の流れ |
---|---|
フリ(共感) | 問題提起・導入 |
ボケ(意外性) | 提案・仮説 |
ツッコミ(納得) | 解決策・まとめ |
いきなり自分で構成をゼロから考えようとしてはいけません。
まずは「型に当てはめてみる」と、構成に迷いがなくなり、読まれるデザインになります。
初心者にとって、お笑いは最高のデザインの教科書

お笑い芸人は、ネタを考えるクリエイティブ力と、それを見せるプレゼン力を兼ね備えたプロフェッショナル。
普段何気なく見ているお笑いのネタは、実は高度に計算されているということが実感できたのではないでしょうか?
そして私たちがデザインに取り組むときもまた、
- 誰に
- どんな感情を
- どうやって届けるか
を考え抜く必要があります。
つまり、お笑いとデザインは「人に伝える」という点で、本質的に同じ仕事なのです。
もし、あなたが
- 「なんとなく伝わらない資料を作ってしまう」
- 「構成の良し悪しが分からない」
- 「もっと人の心を動かせるデザインがしたい」
と感じているなら、デザインスクールで体系的に学ぶのも一つの選択肢です。
たとえば、デジハリ・オンラインやデイトラでは、
- 情報設計(インフォメーションアーキテクチャ)
- 視線誘導と余白の使い方
- プレゼン用資料の構成と表現技法
など、「伝えるためのデザイン技術」が実践的に学べます。
お笑いで磨いた「気づきの目」を、スクールでの学びで「実践の技」に変えていきましょう。


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