仕事やプライベートでも、日常生活の中でポスターやチラシをデザインしていると、どうしても構図に迷うときがあります。
今回は、そんな構図のアイデアの出し方についてです。こちらも働きながら日常生活の中で、デザイン力をあげるのにとても効果を発揮します。
最初は楽しくデザインできるのですが、何度も作成をしていると、だんだんと自分のデザインが似通ってくることがあります。
そんな時は、手元のデザイン本や写真集を参考に、デザイン案を練ったりします。
ただ、やはり手を動かすと予想もしなかったアイデアが浮かぶことがあります。今回は、そんな構図選びに迷ったときの対処法についてお話しします。
結論から言うと、「普段から、好きなデザインや構図を模写をしよう!」ということになります。
真似ることは、真似ぶ(まなぶ)こと
現役のデザイナーとして働いているときにも、アイデアが出ないときは本当に苦労した記憶があります。
特にレイアウトなどのデザインは似たり寄ったりになることが多く、ポジティブに捉えればそれが自分の個性ということになるのですが。
ネガティブに捉えると、デザインがマンネリ化しているとも言えます。
その理由として、普段からのインプット量が圧倒的に少ない、もしくは、インプットの仕方が悪く、自分の中にストックが蓄積されないということが挙げられます。
毎回デザイン本や写真集を眺めていれば、ヒントになるような構図が浮かんだりもしますが、それだと自分の中にストックされる量が少なすぎます。
この状況を打開する手段として、日々自分の好きなデザインや写真、絵の構図を模写(トレース)するという方法があります。
模写、というと、ひたすら色々なものを模写すれば上手くなるのでは??
と思うかもしれませんが、自分が好きでないデザインを模写するというのは中々大変です。(基本的には、自分が模写したいと思う絵やデザイン、写真を選べばOKです)
僕が推奨する方法は、模写(トレース)と言っても、構図に特化することを目的に描くいう方法です。
やり方はシャーペンやサインペン、ボールペン、鉛筆など、自分が一番使いやすい筆記用具と紙があれば、すぐに実践することができるのでオススメです。
ここで、ただ「参考にする絵やデザイン、写真を見るだけでいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかも知れません。
デッサンを経験した方ならわかると思うのですが、見るのと、描くのでは、自分の中に吸収できる情報量が天と地ほどの差があります。
これは、実際に自分でやってみればわかると思います。見てすぐにその構図を空で描ける方というのは、本当にごく少数の方だと思います。
パッと見ただけで、その構図をまた何も見ずに再現するというのは相当至難の業です。
ところが一度、自分で慣れないながらも、実際に模写した後に何も見ずに空で描いて見ると、ある程度その絵が描けるようになっていたりします。
多少の個人差はあれど、それくらい模写の力というのは凄まじいものがあります。
構図の勉強をするときの、模写(トレース)の方法について
簡単に、最近僕が模写した画家のミュシャの絵をご紹介します。模写した絵はこちらです。
こちらは、以前みに行ったミュシャ展で購入したポストカードです。大きさは、普通のハガキよりも若干横長のサイズとなります。
有名な広告的なポスターの作品というより、絵的な要素が強い作品と言えるでしょうか。
この作品を選んだ理由は、横長の構図が珍しかったのと、人物、服装、奥行き、迫力、絵の中にある要素、など、ひとつひとつの要素がカッコイイなーと思ったからです。
色合いも、ノスタルジックな感じでいいですよね。
それでは、最初に僕が、どんな風に模写を進めていったのかみていきたいと思います。
まずは、ラフでいいのでざっくりと絵の要素がどの辺りに配置されているのか、見てみましょう。ここでは、場所が多少ズレていても気にしなくてOK
本当はここまで描き込む必要はないのですが(笑)、描いていて楽しかったので割としっかりと描き込んでしまいました。
背景のところも、しっかりと書き込んでいきます。今度は、少しアップにしてみましょう。
と、まあ、こんな感じで模写を進めて行けば、完成です。
基本的に構図の練習なので、無理して細部まで書く必要はなかったのですが、ひとつひとつの要素が描いていて楽しかったので、最終的には結構きっちりと模写してしまいました(笑)
構図を模写するだけなら、こんなにしっかりと描く必要はないのですが、テンションが上がって細部まで描き込んでしまいました。
(簡単な模写ならここまで描き込む必要は無いので、最後にもっとシンプルにしたものを提示しますね)
完成までの時間は人によって様々だと思います。すぐに書き終わる人もいれば、しっかりと書き込んで何日も書ける人もいるかと思います。
ですが、構図の勉強をするためだけに、ここまで書き込んでしまうと時間がかかりすぎてしまうので、逆に効率が悪くなります。
今回、敢えて、構図を学ぶという目的から外れた、ダメな模写の例を先に提示しました。上手に描けばいいというものではないのです。
なぜなら、本来の目的は、構図のアイデアを学ぶということであったはずです。そこで今度は、目的に合致した、もっとシンプルな模写をお見せしたいと思います。
ざっくりと模写すると、こんな感じです。こちらは、サインペンで簡単に描いたものです。
上の鉛筆で描いたものと比べると、割と書き込みがあっさりしているのがわかると思います。
よく見ると、ところどころ、細部の模様や、絵の要素がズレていたりもします。でも、これでいいんです。
構図を学ぶという意味では、これできっちりと完成しています。最初に描いた絵のように細部を描き込みすぎるのは、構図を学ぶ、という本来の目的からズレてしまっています。
言ってみれば、「木を見て森を見ず」といった状態でしょうか。
これくらいの描き込み量で、自分の好きなポスターや雑誌のレイアウト、写真や絵などを毎日模写して行くと、圧倒的なデザイン案の引き出しが自分の中にストックされていきます。
ただ、本や雑誌を見ている、眺めているだけでは、ほんの少しの情報しか自分の中にストックされていきません。
毎日簡単な模写をするだけで、自分の中に多くのデザインの引き出しが溜まっていくので、とても効率の良い方法だと僕は思います。
デジタルではなく、アナログで模写(トレース)することが大事
ここまで読んで、「ペンタブとか使って模写しちゃダメなの?」と思う方もいるかも知れません。
ですが、僕は敢えて、アナログな紙とペンを使って模写することをお勧めします。
もちろん、ペンタブで慣れている人もいるかと思うのですが。やはり鉛筆やサインペンの線で、描いてみることは非常に大事です。
なぜなら、紙と鉛筆でサラサラと描ける人は、どんなデバイスでも同じ絵や構図を再現することが可能だからです。
時代は日々進化していて、どんどん便利なソフトやアプリケーションが登場しています。
そうすると、そのとき、そのアプリが使えるようになっても、また、新しいソフトが登場したら、その操作を覚え直さなければなりません。
一方、アナログで絵や構図がサラサラと描ける人は、どんなソフトやアプリが登場したとしても、自分の中のイメージや、やりたいことが明確なので、その完成形に近づけるためにソフトを操作します。
この違いがわかるでしょうか?わかりやすく整理すると
①前者は、ソフトの使い方を覚えてから、デザインを完成させる
②後者は、完成させたいデザインを目指すために、ソフトの使い方を覚える
という違いがあります。時代がどんどん進化していく過程の中で、どちらのやり方が、臨機応変に対応できるでしょうか。
そうです。当然②のやり方ということになります。②のやり方であれば、やりたいことが明確なので、ソフトの機能に振り回されることが圧倒的に少なくなります。
一方、①の場合は、ソフトの機能に振り回されて、本来自分がイメージしていた完成形とズレたものができる可能性があります。
これはソフトが便利になればなるほど、顕著になると言えます。
まとめ
模写というと、上手に描けなくちゃダメだよね?と思ってしまうかも知れませんが、それは目的にもよります。
今回は構図を学ぶということをメインにお話してきました。
デザインをするとき、最初に描くのがラフスケッチです。このラフスケッチは今回のように、上手に描く必要はありません。
どんなアイデアで、どんなデザインか分かればいいからです。
普段の事務仕事でも、簡単なポスターやチラシを会社のお仕事で作成することが時々ありますが、まずはラフでイメージを固めてから制作に入ります。
デザインの力を伸ばすのもそうですが、この考え方はどんなお仕事にも応用できる考え方なので、ご紹介しました。
ぜひ、日常生活の中に取り入れてもらえたらと思います。
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