デザイナーとして活動していた時に、僕が感じていた違和感について綴って行こうと思います。
今振り返ってみれば、その時点でデザイナーとして働き続けていくことに少し疑問を感じていたのかも知れません。
今日はそんな違和感を感じた瞬間のお話をしようと思います。
今、まさに、デザイナーを続けようかどうか迷っている人の参考になればと思います。
著名なアートディレクターのもと、働いていたデザイン事務所でのお仕事について
デザイン専門学校を卒業して間も無く、僕は運よく小さなデザイン事務所に就職することができました。
上司はアートディレクターの方ひとりで、あとは同期入社のもう一人のデザイナーさん1人、と、僕だけの総勢3人の会社でした。
過去、そのデザイン事務所が手がけていた作品については、おそらく商品名や企業名を書けば誰もが知っている著名なものばかりでした。
入社当時は自分もこんな風なデザインがしたい、こんな風に自分の作品を手掛けられたら…という思いで頑張っていたのは確かです。
そんな中、ある商品の電車内の中吊りポスターを手掛ける作品に携わることになりました。
企画や方向性は既にかたまっていたので、コンセプトに合わせてアイデアスケッチから作業をスタートするという段階でした。
なかなかアイデアが出ないなか、総勢3人の社員であーでもない、こーでもない、と色々なアイデアを出し、最終的にシリーズでメインのビジュアルを3カット撮ることになりました。
デザインが決まったら、仮のビジュアルを作成してクライアントに提案する準備も必要になります。
写真素材のサイトからイメージに近い写真を探したり、イメージに近いレイアウトを組んだりと、まさに、これぞザ・デザインのお仕事といった感じでした。
完成までの途中には撮影のセッティングもあったりするので、ロケハンやモデルさんのオーディションなども行ったりもしました。
もう何もかも初めてのことで、かなり戸惑っていたのを思い出します。
実際の撮影の日になれば、デザイナーとしてアートディレクターの上司がどうすればスムーズに仕事をすることができるか、自分の頭で考えて動かなければなりません。
当然、全体像が見えていない自分は思うような動きができず、同期入社のデザイナーと反省会をすることもしばしばでした。
そんな紆余曲折がありつつも、写真の素材が揃って実際に本番のレイアウトも組んで、いざ最後のデータを入稿して印刷するという段階までたどり着くことができました。
実際には、ほとんどの作業を上司のアートディレクターの方が請け負っていたと思います。
最終的に、無事に中吊り広告は完成し世の中へ無事に発表されることになりました。
言ってみれば、自分が携わった作品としてはこれが初めての作品だとおもいます。
特に名前などのクレジットなどは入りませんでしたが、自分が文字詰めしたところや、素材を合成したところなど、所々直接手をかけたものが世の中に発表された瞬間でした。
当然、自分が携わった初めての作品なので、実物を電車に乗って街に見に行きました。
「おお、本当に掲示されてるー」と思ったものの、感想としては意外にそれだけでした。
なんか、もっと感動すると思いきや、意外とあっさりしたものでした。
作品が完成したあと、自分が感じていた違和感について
広告ポスターなのだから、当たり前かも知れませんが、街ゆく人は誰もポスターの絵など気にも留めません。
自分が手がけたものだからと言って、特に感動を覚えることなく次のプロジェクトが始まりました。
アートディレクターの上司も、同期入社のデザイナーの方も、特にそれ以上同じ話題に触れることなく次の作品の準備に取り掛かっています。
え?こんなものなの?
これが、自分の率直な感想でした。
デザインも写真もとても綺麗にできているし、無事に世の中にも発表されました。
けれども。
1つ1つのプロジェクトがこんなにもあっさりと終わってしまうのか。という瞬間でもありました。
細かく見ていけば、自分がコンセプトを立てた訳ではないし、ビジュアルのアイデアも自分のアイデアが採用された訳でもありません。
まだ駆け出しだった僕はそのお手伝いをした、という表現が的確も知れません。
それでも、作品の一部は自分が手がけたものです。それにもかかわらず、あまり嬉しいとも感激したとも、思えませんでした。
おそらく、この時点で僕はデザイナーとしての素質に欠けていたのかもしれません。
このブログを読んでいる読者の方はどうでしょうか?
世の中に自分の広告が発表されたときに、とてもやりがいや達成感を感じるという方であれば、デザイナーという職業に向いているのではないかと思います。
あるいは、顧客であるクライアントさんから感謝された時などに、やりがいを感じたりするでしょうか。
本当に自分が満足する働き方ってなんだろうか、と考える日々
デザイナーとして働いているときは気づかなかったのですが、自分はどうやら仕事をしているときは難易度の高いゲームを攻略しているような感覚で作業をしているようでした。
難しい局面に直面しても、あらゆる攻略法を試しながらゲームをクリアしている感覚こそが自分が満足する働き方なのだと、後になってわかりました。
そうすると、僕はデザイナーという職業にこだわらなくても、同じ感覚が得られれば他の職業でも充分満足な働き方ができるのではないか、と考えるようになりました。
ただ、デザインのお仕事に関しては終わっても何か達成感がある訳でなく、むしろ焦燥感の方が強かったです。
それに、つくってもつくっても、日々消費されていく自分の仕事を見ているのは何か切ないものがありました。
感じ方は人それぞれなので誤解のないようにお伝えすると、あくまでも「自分の場合は」という意味になります。
今回記事にした、電車の中吊り広告ポスターも何ヶ月もかけて準備したのに、実際に掲載されたのはわずか2週間弱でした。
そのあと、そのポスターは一切どこにも掲載されることなく、プロジェクトが終わりました。
僕の目指していたデザインの世界ってこんな世界だったっけ??日々、働き続ける中、僕はこの小さな疑問を黙殺して無我夢中で働き続けました。
そして、次に転職した広告制作会社を短期間でやめた後は、「自分が楽しく、長く働ける場所ってどこだろう?」と悶々とする日々を過ごし続けることになったのです。
この時点で、僕はデザイナーという職業には向いていなかったのかも知れません。
まとめ
今、この瞬間も、自分のお仕事に満足しているでしょうか?やりがいは感じているでしょうか?
デザイナーという職業はある人にとっては憧れの職業の1つかも知れません。
毎日、広告やポスターを作るのが楽しくて楽しくて仕方がない、という方はきっとデザイナーという職業に向いていると思います。
ですが、ある人にとってデザイナーというのは想像以上に過酷な職業の1つなのかも知れません。
早く一人前になりたい、早く技術を身に付けたい、ある程度の実務経験を積みたい、もっと大きな仕事がしたい。
色々な思いが自分の中にあるかと思いますが、もっと小さな思いである「この仕事が楽しい」という感覚を見過ごしていないでしょうか。
もし、今の働き方や達成感などに小さな違和感を感じているのであれば、本当は自分にあった職業が他にあるのかも知れません。
実際、日本には何千、何万という会社や組織があるのです。インターネットが全盛の時代は働き方も多種多様です。
自分の人生は一度きりです。もっと自分が輝ける場所があるのではないか?
そう思っているなら、転職活動の準備だけでもしておくと良いかも知れません。転職にはリスクがありますが、転職活動をするだけならノーリスクなのですから。
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