普段、私たちは文字に対してどれほどの意識を持ってみているでしょうか。
- デザインの力を底上げするにも
- デザインコンテストで入賞をするにも
- デザインの副業で稼ぐにも
これらの目標を達成するためには、文字デザインの基礎をしっかりと身に付けておく必要があります。
「ちゃんと文字のことも意識してるよ」、「いつもフォントを選ぶ時は慎重に選んでる」という人もいるかも知れません。
ですが、デザインの世界ではさらに一歩踏み込んで、より高度に文字デザインについて学んでいきます。
ここでは、そんな文字に対する意識を高めるための「レタリング技能検定」についてご紹介します。
初学者にもオススメの内容となっていますので、この記事を読んでぜひ文字に対する意識を高めていってください。
レタリング技能検定とは
レタリング技能検定は「公益財団法人 国際文化カレッジ」を運営母体とする資格検定試験です。
数ある資格の中でも、かなりの専門性を求められる資格試験。
文部科学省からも後援を受けており、履歴書にもきちんと記載できる資格となっています。
以下、レタリング技能検定の概要について簡単に見ていきましょう。
試験日
レタリング技能検定は例年6月に試験がおこなわれます。
検定試験はA日程とB日程があり、違いは以下の通り。
- A日程は6月の第1日曜日 ⇒ 本会場受検、個人受検、1級受検はA日程のみ
- B日程は6月の第2土曜日 ⇒ 準会場受検は団体受検のみで、A日程・B日程の選択が可能
2つの受験日がありますが、同じ受検者がA日程とB日程の両方に出願することはできません。
多くの人は個人受験での申込みとなると思いますので、A日程に照準を置いて対策をすればOKです。
願書の請求は例年3月から4月中旬までで、この時期を逃すと受験申込ができなくなってしまうので、はやめに取り寄せておきましょう。
受験資格
受験資格は以下の通り。
年齢・性別・学歴・経験等すべて不問。
基本的には、特に制限なく、老若男女あらゆる世代の人が受験できます。
そのため、いつから始めても遅すぎるということはありません。
級位について
級位についてはレベル別に1級から4級までの等級が設定されており、以下のような区分けになっています。
デザインやレタリングの勉強が全くのはじめてという初心者の場合、まずは4級から受験してみると良いでしょう。
1級 | プロデザイナー |
2級 | プロデザイナー志望者 |
3級 | 学校や職場などでのレタリング特技者 |
4級 | 初心者、学生などレタリングに興味を持つ人 |
自分の今の環境やレベルに合わせて受験する級を選べば、特に問題ないでしょう。
試験科目
試験科目については、知識と実技の2種類の試験があります。
- 知識問題(解答用紙 1枚)
- 実技問題(解答用紙 3枚)
知識問題は書いてある字の通り、レタリングやフォントに関する知識を問われる問題が出題されます。
実技問題は、練習してきた文字を本番でキレイに描くことを想定しているため、受験前にしっかりと文字の形や特徴を捉えておかなければなりません。
そのため、レタリング技能検定の試験は一朝一夕に対策できるものではありません。
かなりの練習期間を経て、ようやく本試験へと臨めるのです。
試験時間
各級の試験時間ですが、どの級も知識問題は30分で共通です。
実技は一番短いもので4級の1時間40分、一番長いもので1級の4時間。
3級 | 9:40 ~ 12:10 | 知識30分/実技2時間 |
4級 | 13:10 ~ 15:20 | 知識30分/実技1時間40分 |
2級 | 13:10 ~ 16:10 | 知識30分/実技2時間30分 |
1級 | 11:40 ~ 16:10 | 知識30分/実技4時間 |
さすがに1級ともなると、かなりの体力と精神力が必要とされます。
まずは、無理のないよう4級、3級くらいから順にステップアップしていきましょう。
受験料
受験料に関しては以下の通り。
1級 | 6,000円 |
2級 | 4,900円 |
3級 | 3,800円 |
4級 | 2,400円 |
他の資格試験に比べて、割と受けやすい価格ではないでしょうか。
ダブル受験もできるので、タイミングが合えばそちらも検討してみても良いでしょう。
合格率
合格率については、以下の通り。
1級 | 9.1% |
2級 | 34.0% |
3級 | 68.7% |
4級 | 81.1% |
4級と3級については、受験者の半分以上の人が受かっているので、そこまで怖がることはありません。
一方の、2級と1級については合格率が半分以下となっているため、かなりしっかりと対策をする必要があります。
自分のレベルに合わせて、無理のない級を受験すると良いでしょう。
合否の判定
知識問題、実技問題(3課題)の 4 枚とも、それぞれの採点基準(70%前後)に達した場合にのみ合格となり、いずれか1枚でも失格の場合は、不合格となります。
このことからもわかる通り、どこかの分野の知識・技術がゼロというのは望ましくありません。
基本的には全ての範囲を満遍なく学習・練習をして、本番に臨むようにしましょう。
レタリングを勉強すると得られるメリット3選
ここまでレタリング技能検定の簡単な概要について見てきましたが、ここではレタリングを勉強すると得られるメリットについても見ていきます。
レタリングを勉強すると得られる主なメリットを3つ挙げます。
- 文字に対する意識が深まる
- 読みやすい文字を作り、視認性を高める
- 仕事に役立つ
それぞれ、順に観ていきましょう。
文字に対する意識が深まる
レタリングのことを勉強すると、いかに普段、自分が文字をそこまでしっかり見ていなかったかに気付くでしょう。
実際、レタリングのことを学ぶ前と学んだ後では、私自身も文字に対する認識が一変しました。
文字を拡大して細部を見てみると、1つ1つの「止め」や「はらい」も洗練されているフォントも多数。
和文だけでなく、英文に対する意識も高まりますし、フォントを選ぶ時もかなり慎重になります。
こればかりは、一度学んでみないと感覚が分からないと思うので、ぜひ一度学んでみることをオススメします。
読みやすい文字を作り、視認性を高める
レタリングを学んでからは、常に読みやすい文字・視認性を一層意識するようになりました。
あまりに大きすぎたり、小さすぎたりすると、極端に視認性が低くなってしまいます。
基本的には紙面や画面に対して適切な文字の大きさがあるので、それらを意識するようになりました。
普段読む雑誌や本、新聞、インターネットサイトの文字など、意識してみてると面白いかも知れません。
仕事に役立つ
もちろん、仕事でも文字を扱う場面でこれらの知識がとても役に立ちました。
- 厳かな雰囲気の時にある書体
- 和気藹々とした雰囲気の時に使用する資料に使うフォント
- 手書き風の文字で柔らかい印象を与えるプレゼン資料
色々な場面で、読みやすい文字を作り、視認性を高めることが可能です。
文字デザインの種類のついて
ここでは簡単に文字デザインについて、3種類ほど見ていきましょう。
- タイプフェイス
- ロゴタイプ
- タイポグラフィックデザイン
初めて聞いた用語もあるかも知れませんが、簡単にそれぞれの特徴を解説します。
いずれもデザインを勉強する上では、必ず知っておかなければならない用語です。
タイプフェイス
画像引用:文字デザインの魅力|レタリング技能検定 (lettering-kentei.com)
タイプフェイスという言葉は、もともと金属活字の字面(じづら)を意味していました。
時代の変化とともに、活字の字面一式を指すようになり、このように呼ばれるようになりました。
ロゴタイプ
画像引用:文字デザインの魅力|レタリング技能検定 (lettering-kentei.com)
図案をみてもらうと分かる通り、ロゴタイプは図案化された文字のことを指します。
似たような用語で、ロゴマークという言葉がありますが、こちらは文字とマークを組み合わたものを指します。
タイポグラフィックデザイン
画像引用:文字デザインの魅力|レタリング技能検定 (lettering-kentei.com)
タイポグラフィックデザインとは、「タイポグラフィ」と「デザイン」という言葉を掛け合わせた用語です。
タイポグラフィは、活字などを用いて適切に配列させることで文字の体裁を整える技術を指します。
それらの技術とデザインの要素を組み合わせたものがタイポグラフィックデザインと認識すると分かり易いでしょう。
【等級別】レタリング技能審査基準について等級別の問題
ここでは、レタリング技能審査基準について知ることで、それぞれの等級でそれくらいのレタリングレベルが求められているのかを確認してみましょう。
1級の技能審査基準
1級の技能審査基準(プロデザイナーが対象) | ||
---|---|---|
程度 | 領域 | 内容 |
レタリングおよび広く関連領域にわたる知識と、高度な専門技術をもっている | 知識 | ●レタリングに関する造形理論の基本を理解している。 ●タイポグラフィを理解している。 ●コミュニケーションにおけるレタリングの役割を理解している。 ●色彩・印刷に関しての知識をそなえている。 |
実技 | ●ロゴタイプ、タイプフェイス、カリグラフィなどレタリング技術を身につけている。 ●文字の色彩的表現ができる。 ●タイポグラフィを的確に指定し、指示することができる |
1級については、かなり専門的な知識・技能が求められることが分かりますね。
2級の技能審査基準
2級の技能審査基準(プロデザイナー志望者が対象) | ||
---|---|---|
程度 | 領域 | 内容 |
書体(1)を選択または創作し、表現する能力をもっている | 知識 | ●レタリングに関する専門用語(2)を理解している ●印刷についての基礎知識(3)をそなえている |
実技 | ●和文指定書体(漢字・かなまじ文)、欧文指定書体を視覚的に統一して、一定時間内で表現できる ●語句にふさわしい書体を選択または創作 し、一定時間内で表現できる |
引用:レタリング技能検定 第48回団体受検案内 (lettering-kentei.com)
2級については1級よりも少しレベルが緩和されますが、それでも専門的な知識・技能について、高いレベルが求められます。
3級の技能審査基準
3級の技能審査基準(学校や職場などでのレタリング特技者が対象) | ||
---|---|---|
程度 | 領域 | 内容 |
基本の書体を理解し、その表現技術をもっている | 知識 | ●常用漢字表に使われている明朝体の骨格を正しく理解している ●基本の書体を理解している ●国語の用字・用語に対する基礎的な知識をそなえている ●レタリングに必要な用具・用材の基礎的な知識をそなえている |
実技 | ●指定された基本の書体(漢字・かな文字の明朝体・ゴシック体、欧文のローマン体・サンセリフ体およびアラビア数字)の文字を手本なしで、一定時間内で表現できる ●レタリングをするための、初歩的な描線技術が身についている |
3級では、普段学校で習うような内容についてしっかりと知識があるか、レタリングの技術があるか、などの点が求められていますね。
4級の技能審査基準
4級の技能審査基準(初心者、学生などレタリングに興味を持つ人が対象) | ||
---|---|---|
程度 | 領域 | 内容 |
基本の書体を理解し、整った文字を書くことができる | 知識 | ●常用漢字表に使われている明朝体の骨格を基本的に理解している ●基本の書体のうち漢字・かな文字の明朝体・ゴシック体、欧文のローマン体・サンセリフ体を理解している |
実技 | ●指定された手本の文字を一定時間内で見て書くことができる |
4級については、文字に対する基本的な部分についての学習がメインとなっていますね。
>レタリング技能検定の対策方法
レタリング技能検定の対策方法は、以下の3つが一般的でしょう。
- 過去問の研究
- 参考書
- 通信講座
いずれも多少の費用が掛かりますが、メインの受験生はデザインを勉強している学生ですので、そこまで高額な費用ではありません。
特に過去問については、わざわざ購入する必要はなく公式サイトで無料で閲覧可能。
独学で勉強するよりも、参考書や通信講座は体系的にカリキュラムが組まれています。
これらの教材を利用すれば、より効率的に試験対策が可能となるでしょう。
過去問の研究
レタリング技能検定の過去問と解答は、公式サイトにPDFで掲載されているので確認してみてください。。
直近7回分くらいの過去問が遡れるので、割と試験の傾向はつかみやすいです。
ただし、慣れていないとキレイな線が引けなかったり、塗りが甘かったり、道具の使い方が分からなかったりと、最初は覚えることが多いでしょう。
何回も手を動かして、本番でも練習と同じようにリラックスした気分で受けるのがポイントです。
参考書
レタリング技能検定の参考書は、運営母体である公益財団法人国際文化カレッジより出版されています。
ただし、普通の本屋さんや図書館では取り扱いが無いため、公式サイトから自分で申込みをして購入する必要があります。
出版されている参考書のは以下の2冊。
- 用語集改訂版 書体サンプル集(税込1,400円)
- レタリング技能検定 フリーハンド課題合格のための文字骨格練習帳(税込550円)
それぞれの参考書は公式サイトから購入可能です。
2冊購入しても、2,000円弱なのでそこまで大きな負担にはならないでしょう。
さらに、1冊ずつ購入すると、それぞれプラスで送料500円が掛かってしまいますが、2冊同時購入だと送料が無料になります。
参考書での対策を検討している人は、必ず2冊ともゲットしておきましょう。
通信講座
レタリング技能検定には、試験対策に特化したレタリング講座の通信教育もあります。
標準の学習期間は4か月ほどで、一般個人受験料は一括払いだと18,000円、分割払いだと19,000円となっています。
教材の構成は以下の通り。
- テキスト2冊
- 練習帳1冊
- ガイドブック
- 添削・質問関係書類一式
独学での対策が難しいという方には、非常に価値のある教材となっています。
課題の添削も5回(修了課題1回を含む)セットになっているので、きちんとしたフィードバックも受けられる講座となっています。
デジタル全盛の時代だからこそ、ベーシックなレタリングの技術を学んで感性を磨いていこう!
パソコンやスマホ、タブレットを使うのが当たり前になった現代では、手書きで文字を書く機会は少なくなってきています。
特に、社会人になってからはパソコンを使用してキーボードで文字を打つことが日常でしょう。
ですが、それだけでは文字に対する知識・技能は身に付けられません。
実際に自分の手を汚しながら、紙に文字を1文字1文字書いていく作業がとても重要になってきます。
印刷された文字を同じように模写してみると、最初はとても難しく感じるでしょう。
それでも、ひたすら練習を重ねていけば、手描きでもまるで印刷されたかのような綺麗な文字を書けるようになります。
ここまでくると、最初はメンドクサイと思っていたレタリングの勉強がとても楽しくなってくるでしょう。
デザインをする上で文字の要素は絶対にはずすことはできません。
ぜひ、レタリングの知識・技能を極めて、より一層レベルの高いデザインを目指していきましょう!
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