ここ数年、「公務員にもデザイン職があるらしい」という声を耳にする機会が増えました。
広報や観光の分野でその存在が注目され始めてはいるものの、まだその実態や将来像が広く知られているとはいえません。
しかし、社会が大きく変化していく中で、行政と住民を“つなぐ”存在として、デザイン職の重要性は確実に高まっています。
特に、自治体の魅力を発信するだけでなく、誰にとっても使いやすい手続きの導線設計や、複雑な施策を分かりやすく可視化するなど、「伝える力」が行政の質を左右する場面が増えています。
この記事では、公務員のデザイン職が現在どのような役割を担っているのか、そして2040年にはどのような進化を遂げるのかを探っていきます。
未来を想像しながら、今できる準備についても一緒に考えていきましょう。
なぜ今、公務員デザイン職が注目されているのか?

民間企業において「デザイン」はすでに企業活動の核となる役割を担っていますが、ここ数年、行政の現場でも「デザイン職」の必要性が高まりつつあります。
たとえば、広報誌の制作やポスターのデザインといったビジュアル表現だけにとどまりません。
WebサイトやSNSを活用したデジタル発信、イベントにおける空間演出など、住民との接点で「わかりやすく伝える」工夫が求められるようになってきました。
その背景には、以下のような課題があります。
- 少子高齢化や地域の過疎化による行政課題の複雑化
- 外国人住民や多様な世帯への対応
- テクノロジーの進化による行政サービスの多様化
このような社会の変化に対応するには、従来の文章中心の行政サービスでは限界があります。
これからの行政には「人に寄り添い、伝わるかたちを設計する力」=デザイン力が求められるのです。
公務員デザイン職の現在と未来

この章では、公務員のデザイン職が現在どのような役割を担っているのか、そしてその仕事が今後どのように変化していく可能性があるのかを見ていきます。
今はまだ採用枠が限られている分野ではありますが、すでに一部の自治体ではデザイン的な思考を取り入れた取り組みが始まっています。
そうした実例を踏まえつつ、公務員デザイン職の今と未来について考えてみましょう。
現在の仕事内容|今、どんな業務を担っているのか?
現在、公務員のデザイン職が関わっている主な業務は以下のとおりです。
- 紙媒体の制作
- Web・SNS発信の設計
- 地域ブランディングの構築
- イベント・空間のデザイン
- 住民向け資料のデザイン
なお、「公務員のデザイン職」を正式な採用枠として設けている自治体は、現時点ではそれほど多くありません。
とはいえ、デザイン的な役割をもつ職員が活躍している例は全国に点在しています。
たとえば、北海道美幌町では、パンフレットや広報誌、観光サイトのデザインを通じて町の魅力を効果的に伝える「デザイン広報戦略」が実践されています。
また、静岡県掛川市では、「政策デザイン室」に近い役割を担うチームが、市民参加型のまちづくりや公共空間のデザインに取り組んでいます。
これらの事例は、あくまで“参考事例”ではありますが、今後の行政において「デザイン」がいかに不可欠な視点となっていくかを示すヒントになります。
社会の変化と行政の未来|2040年の自治体で求められる“伝え方”とは?
2040年の行政には、以下のような変化が訪れると考えられます:
- 地方では人口減少が深刻化し、自治体の統廃合も進む
- 外国人住民の増加により、多言語・多文化への対応が不可欠に
- 行政の窓口業務はオンライン化され、紙よりも画面で伝えることが標準に
- AIやメタバースなど、新技術を活用した政策・広報が主流に
このような社会においては、行政が「情報を管理するだけ」でなく「情報を活用し、相手に届く形に設計する」ことが求められます。
視覚表現、UI設計、共感を生むストーリーづくり。どれもデザインの力が活きる分野です。
これらの変化に対応するためには、単なる情報伝達ではなく、住民が「理解できる」「安心できる」かたちで施策やサービスを伝える必要があります。
行政のあらゆる接点において、デザイン思考が求められる未来がすぐそこに来ているのです。
2040年の公務員デザイナーの仕事とは?
未来の公務員デザイナーは、次のような業務に携わっているかもしれません。それぞれが従来の行政にはなかった新しい視点を取り入れたものです。
- 行政アプリや手続きページのUI/UX設計
- AIを活用した広報物(チラシ、動画)の生成と監修
- 多言語インフォグラフィックで施策説明を視覚化
- メタバース空間内での住民向け案内所やイベント空間の設計
- プレゼン資料をビジュアル化して政策理解を促進
このように、視覚と技術を融合させた「行政の伝え方改革」を担うのが、未来の公務員デザイナーの役割になっていくでしょう。
妄想!2040年の公務員デザイナーの一週間
ここでは、2040年の公務員デザイナーの働き方を少しだけ“妄想”してみましょう。
テクノロジーが進化し、行政の在り方が変わった未来では、どんな日々が待っているのでしょうか?
現実的な延長線上にある未来の姿を、1週間のスケジュール形式で描いてみます。
- 月曜:AIと連携して子育て支援パンフレットの草案を生成、その場でAR対応版も作成
- 火曜:メタバース庁舎で留学生向けに多言語案内セッションを実施
- 水曜:SNSショート動画で就職支援制度を紹介、編集・投稿まで担当
- 木曜:交通案内アプリのUIをデータ分析に基づいて再設計
- 金曜:市長の政策プレゼン資料を動画化、全国自治体向けに配信
こうして見ると、公務員デザイナーの1週間は非常に多様でダイナミックです。
オンラインとオフラインを横断しながら、住民との接点を設計し、政策を伝え、サービスを最適化していく——そんな役割が未来の行政には求められるでしょう。
これらの業務はいずれも「伝える力」をベースにしており、デザインという視点が行政のあらゆる場面に浸透していることを示しています。
公務員デザイナーになるには?今からできる準備と学び

未来の行政で求められるデザインの役割を理解した今、次に気になるのは「自分がその職に就くためにはどうすればいいのか?」ということではないでしょうか。
ここからは、公務員のデザイン職を目指すうえで、今からできる準備や、どのようなスキルを意識して学ぶべきかについて紹介していきます。
まだ明確な採用枠がない自治体も多いなかで、自分にできることを着実に積み重ねていくことが、未来への近道となるはずです。
必要なスキルとマインドセット
公務員のデザイン職を目指すにあたって、求められるスキルや姿勢には一定の傾向があります。
以下に示すのは、実際に現場で求められるであろう4つの要素です。
- デザインツールの習得(Canva、Figma、Illustratorなど)
- 発信力(SNS・YouTube・ライティング)
- ユニバーサル&多文化対応力
- テクノロジーとの協働姿勢
ひとつずつ着実に意識して育てていくことが、未来のデザイン人材への第一歩となるでしょう。
想像力が、行政デザインの出発点になる
行政デザインにおいて最も大切なのは、専門的なスキルだけではありません。
住民の立場になって「この案内、分かりづらくない?」「もっとこうした方が安心かも」と想像できる力。
これはどんなツールよりも重要なスキルです。
行政の現場では、情報を正確に届けるだけでなく、「伝わったかどうか」が成果を左右します。
だからこそ、ひとりの生活者としての視点や、誰かの困りごとを想像する姿勢こそが、公務員デザイナーとしての出発点となるのです。
「この案内、分かりづらくない?」「もっとこうした方が安心かも」と想像できる力こそ、行政デザインにおいて一番重要なスキルかもしれません。
学びを始めるためのおすすめの講座

ここまで読んで、「今から学び始めたい」「スキルを少しずつ身につけていきたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
公務員のデザイン職に必要なスキルは、専門学校や大学だけでなく、オンライン講座でも段階的に習得できます。
この章では、初心者の方でも取り組みやすいおすすめの講座を紹介します。
自分のペースで無理なく学びをスタートさせましょう。
今のうちにスキルを積んでおこう
公務員のデザイン職を目指すうえで、今から少しずつスキルを身につけておくことは非常に有効です。
自治体によってはデザイン職の採用情報が突発的に出ることもあり、準備していたかどうかでチャンスをつかめるかが分かれます。
ここでは、初心者でも安心して始められ、実務にもつながるおすすめの講座や学習サービスをご紹介します。
- デイトラ|Webデザインコース
- ヒューマンアカデミー
- インターネット・アカデミー
いずれの講座も定評のあるばかり。自分にあうコースを選んで、しっかりと対策を練っていきましょう。
デイトラ|Webデザインコース

実践重視のカリキュラムで、バナー制作やLP設計、コーディングまでを段階的に学べます。
動画と演習のバランスがよく、行政広報で求められる“見せるスキル”をしっかりと養えます。
副業や転職にもつながる即戦力スキルが魅力です。
ヒューマンアカデミー

公務員試験対策に加え、WebデザインやDTPデザインなどのスキルを自宅で学べる通信講座です。
デザイン初心者にもやさしいカリキュラムが特徴で、行政広報に活かせる実践的な力が身につきます。
インターネット・アカデミー

インターネット・アカデミーは、1995年に開校した日本初のWeb・IT専門スクールです。
Webデザイン、Webマーケティング、プログラミングなど、「ビジネス現場で活躍する」Web・IT人材の育成を行っており、3万人以上の卒業生が活躍しています。
あなたのデザインで、未来の行政が変わる

この記事を読んで「自分にも何かできるかもしれない」と感じた方は、もう第一歩を踏み出しています。
公務員のデザイン職は、これからの行政において確実に求められる存在です。
まだ前例の少ない分野だからこそ、あなたの想像力と行動力が、新しい仕事のかたちをつくっていくでしょう。
この国のデザイン行政の未来は、まだまだ未知数です。 そこに“あなたの色”を重ねていく準備、今から始めてみませんか?
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