デザインセンスを磨くには、美しいものを見るだけでは不十分です。
「なぜその人は、それを選んだのか?」という視点を持つことで、センスはより深く、洗練されたものになります。
そこで注目したいのが、日常の中でもっとも身近な観察フィールドであるコンビニ。
さまざまな世代/ライフスタイルの人が、それぞれの価値観で商品を選ぶ場所です。

この記事では、実際の観察例を交えながら、観察力とデザインセンスを同時に鍛える方法をご紹介します。
今回の記事を読めば、日常の買い物時間が「デザインの学び場」に変わる感覚をきっと体験できるはずです。
ちなみに筆者である僕ぴりおどは、元・民間デザイナーで現在は事務職。
デザインを専門にしない環境でも、「観察」や「違和感への気づき」は日常的にトレーニングできると実感しています。
コンビニは観察力とセンスを鍛える場所

コンビニという空間は短時間で多くの情報が視覚的に飛び込んでくる、いわば「日常のデザイン美術館」。
その中で以下の3点が、特に観察力とセンスを同時に鍛える上で効果的です。
- 商品やパッケージのデザインが豊富
- 「選ぶ人」をリアルタイムで見られる
- コンビニは流行の「今」が並ぶ場所
この3つの視点を意識するだけで、何気ない買い物時間が学びの瞬間に変わります。
商品やパッケージのデザインが豊富

コンビニの棚には、季節限定・話題性重視・高級感・かわいさ重視など、多様なデザイン戦略が詰まっています。
比べて眺めるだけでも、ターゲット層やブランドの意図を読み取るトレーニングになります。
たとえば、「あえて目立たないように設計されたパッケージ」や「ド派手な色使いで注目を集める商品」が並んでいることも。
これらの違いに気づくこと自体が、視覚的な観察力の第一歩となります。
「選ぶ人」をリアルタイムで見られる

学生、ビジネスパーソン、シニア、ファミリー層…コンビニには日々、あらゆる人が訪れます。
その人がどんな商品を手に取るのかを観察することで、「このパッケージは誰に響いているのか?」を肌感覚で掴めるようになります。
「誰が、どんなタイミングで、何を選ぶのか?」
この行動の背景にある心理や価値観を想像することが、観察力を飛躍的に伸ばします。
コンビニは流行の「今」が並ぶ場所

コンビニの棚は、「いま売れている」「旬のデザイン」が集まる場所でもあります。
新商品、期間限定、トレンドワードを押さえたパッケージ…すべてが「今この瞬間のマーケティング」を反映しています。
つまり、ただ眺めるだけで「今、世の中でどういうデザインがウケているのか?」が肌感覚で掴めるのです。
雑誌やSNSの情報より、リアルな生活者の選択肢に触れられるのが、コンビニ観察の大きな価値です。
実践例から学ぶ!観察力とセンスを鍛える方法

観察力やセンスを養うためには、机上の理論だけでは足りません。
実際の現場に身を置いてこそ、「本当に選ばれているデザイン」が見えてきます。
ここでは、筆者自身が日常の中で行っているコンビニ観察の実例を3つご紹介します。
- スーツ姿の男性が選んだコーヒー
- 高校生が選んだ期間限定スイーツ
- 主婦が選ばなかった派手な商品
一つひとつの例を通して、デザインの「選ばれ方」や「選ばれなさ」の理由を考える力を身につけていきましょう。
スーツ姿の男性が選んだコーヒー

時間帯:AM8:00前後
観察対象:30代、黒いスーツ姿のビジネスマン。イヤホンをしてスマホを見ながら入店。
選んだ商品:マットブラックの缶コーヒー(情報量が少なく、極めてシンプルなラベル)
考察ポイント:
- 「余計なことは考えたくない」「機能性重視」の価値観がうかがえる
- スタイリッシュで視認性も高く、朝の忙しさにも適したデザインを選択
デザイン視点:
- 色数を減らしたシンプルなデザインは、スピードと信頼感を演出
- マットブラックの余白の広さが「落ち着き」や「知的さ」を感じさせる
この観察で注目すべきは、パッケージデザインが“スピードと効率”を求める朝の時間帯にマッチしていたこと。
装飾を極限まで省いたマットブラックの缶は、情報過多な朝の脳にとって「わかりやすく、すぐ手に取れる」安心感を与えています。
また、ラベルの文字が少ないことで、“選択のストレス”が減るという心理的効果も期待できます。
彼のような忙しいビジネスパーソンにとって、視覚的に整理されたデザインは「余計な判断をさせない優秀なパッケージ」になっているのです。
高校生が選んだ期間限定スイーツ

時間帯:PM16:30頃
観察対象:制服姿の女子高生3人組。笑いながらお菓子棚へ直行
選んだ商品:桜モチーフの春限定プリン。手描き風のフォントとくすみピンクが印象的
考察ポイント:
- 「写真映え」「季節感」「可愛さ」が強い購入動機と考えられる
- SNSや友達との話題にしやすい商品選びを重視している可能性
デザイン視点:
- 手描きフォントやパステルカラーは、親しみやすさや共感を意識した設計
- 世界観のあるデザインが「所有欲」や「共感消費」を生む
この事例から読み取れるのは、見た目の印象や話題性が、購買行動に強く影響している点です。
Z世代のようにSNSとの親和性が高い層にとっては、「かわいくて写真に撮りたくなる」ことが、商品選びの大きな基準になります。
視覚だけでなく、“シェアしたくなる感情”に寄り添ったデザインが鍵と言えるでしょう。
主婦が選ばなかった派手な商品

時間帯:PM17:00頃
観察対象:40代後半の女性。カジュアルな服装で、スマホを見ながら商品棚を眺めている
選んだ商品:茶色と緑の落ち着いた色のパッケージドリンク(糖質オフ系)
戻した商品:赤と黄色が強い、新発売の高糖質スムージー
考察ポイント:
- 健康志向・落ち着き・過度な情報への疲れが感じられる
- 「派手すぎるデザイン=自分には必要ない」と無意識に判断した可能性
デザイン視点:
- 派手なパッケージ=視認性は高いが、ターゲットによっては逆効果
- 選ばれない理由から、誰向けのデザインなのかを逆に読み解ける
このケースで見えてくるのは、「過剰なアピールが逆効果になる場面」もあるということです。
控えめなデザインの方が安心感や信頼感を与え、選ばれることもあります。
逆に、インパクト重視のデザインが“選ばれない理由”になる瞬間を観察することで、「デザインの向き・不向き」を見極める力が養われます。
観察を続けることで得られる3つの効果

観察を日常的に続けることで、以下のような具体的なセンス向上効果が期待できます。
- デザインの“ターゲット意識”が体感でわかる
- 人の好みや行動パターンを読み解く力が育つ
- 自分の感性を“言語化”する力が伸びる
それぞれの効果について、以下で詳しく見ていきましょう。
ターゲット意識が体感でわかる

机上のマーケティング理論よりも、「本当に選ばれている姿」から学ぶことで、現場感のある判断力が育ちます。
観察を重ねることで、「この商品は誰のために作られたのか?」という視点が自然に持てるようになり、デザインの方向性やターゲット設定に迷いがなくなります。
人の好みや行動パターンを読む力が育つ

観察の積み重ねは、ただの“眺め”では終わりません。
「この年齢層はこの色に惹かれやすい」「この場面では機能性が重視される」といった傾向が、自分の中に蓄積されていきます。
資料作成、プレゼン、販促物の提案などでも、「相手が好むデザインとは?」を想像できる力がつきます。
自分の感性を言語化する力が伸びる

「なんとなく良い」から「〇〇だから良い」へ。
観察力が高まることで、直感的な好みを明確な言葉で説明できるようになります。
デザインレビューや企画の場面でも、感覚だけに頼らない、説得力ある説明ができるようになります。
日常に潜むデザインのヒントを見逃さない

デザインの学びは、スクールや本の中だけにあるものではありません。
「今、自分の目の前に何があるのか」
「なぜその人はそれを選んだのか」
そうした問いを日々投げかけることが、観察力と感性のベースになります。
たとえば、商品棚で手に取られなかったパッケージを見て「なぜ選ばれなかったのか?」を考えてみる。
あるいは、似たような商品が並んでいる中で「自分ならどれを選ぶか?その理由は?」と考えてみる。
これらはすべて、日常の中でできる“デザインの目”を育てるトレーニングです。
そして、そうした機微に気づけるようになると、街を歩くだけでも
- 「配色」
- 「文字の使い方」
- 「情報の整理の仕方」
など、あらゆるものが教材になります。
今回はコンビニエンスストアにいる第三者の行動を観察する視点でセンスや感性を磨く記事を書きました。
そして、別の記事でも自分のデザイン力を上げる方法を書いています。
こちらは第三者の観察ではなく、自分自身の行動を客観的に観察することで「自分の個性や強みを発見できる内容」となっています。↓↓↓↓↓

今回の方法と同様、お金をかけずにデザイン力を高められる内容となっていますのでぜひ読んでみてください。

まさに、センスは「磨く」のではなく「気づいていく」ことで自然に育っていくものなのです。
観察×感性=選ぶ目を育てる日常習慣

コンビニは単なる買い物の場ではなく、「人が商品を選ぶ瞬間」をリアルに見られる、最高のトレーニング場です。
美しいものを見るのではなく、“美しいと感じた人の行動”を観察すること。それが、あなたの感性にリアルな深みと説得力を与えてくれます。
次にコンビニへ行ったときは、ぜひ少し立ち止まってみてください。誰が、どんな表情で、どんな商品を手に取ったか。
それに気づいた瞬間から、一歩ずつ確実に「デザインセンスを育てる旅」は始まっています。

もっと体系的にデザインを学びたいと思ったらオンラインスクールの活用もオススメです。
この記事で紹介したような日常観察だけでも、センスや視点は確実に磨かれていきます。
でも、磨いたセンスや感性を活かして更なるスキルアップを目指したいという人もいるでしょう。
- 自分の感性をカタチにする力もつけたい
- デザインの基礎やツールの使い方も学びたい
- 副業やキャリアチェンジにも活かしたい
こんな風に感じていたら、ぜひオンラインのデザインスクールも検討してみてください。たとえば…
デイトラはコスパに優れた実践型でデザインが学べる人気の講座。
デジハリは手厚いサポート体制で初学者からプロレベルまで対応しています。
「日常の観察(インプット)」と「スクールでの学び(アウトプット)」を組み合わせれば、デザイン力は一挙に加速します。
ぜひ、自分に合った学びのスタイルを見つけてみてくださいね。


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