このブログでも度々取り上げているように、行政や公務員の世界でもデザインの力が脚光を浴び始めています。
地方公務員や自治体の職員でも、デザイン・クリエイティブ枠の事務職を募集。
そんな時代背景をもとに、厚生労働省でも新しいデザインの職種募集がおこなわれていました。
その名も「デザイン専門官」
すでに募集は終了しているものの、ついに国家公務員の世界でもデザインの力が脚光を浴びるようになりました。
そこで、ここでは先日まで募集がおこなわれていたデザイン専門官がどのような職であったのかを解説。
毎年定期的に募集されている訳ではないので、このようなチャンスはいつ巡ってくるか分かりません。
公務員のデザイン職を目指す人は常日頃アンテナを張って、このような情報を見逃さないようにしておきましょう!
なぜ、厚生労働省がデザイン力を強化することに力を入れ始めたのか?
このブログでもご紹介していますが、民間企業だけでなく、行政や公務員の世界でも、いまデザインの力が見直され始めています。
僕がデザイナーとして勤務している頃から、デザインの力が社会的にも注目されはじめている感じはありましたが、今はもっとその毛色が強いですね。
特に、行政や公務員の世界、特に国家公務員である厚生労働省でもデザインの力が活用され始めたというのは、まさに画期的。
そんな時代に、厚生労働省でもデザインの力を強化して広報改革に力を入れることを目指す政策が始まりました。
例えば、新型コロナウィルスが蔓延した際には、全国民に正確な情報を伝えなければならなかったのにもかかわらず、様々な情報が錯綜し、混在していたことは記憶に新しいでしょう。
もしあの時、厚生労働省が情報を整理して視覚的に分かりやすい情報を伝えられていたら、混乱は最小限に抑えられたかも知れません。
デザインの力というのは、それくらい大きな可能性を秘めています。
全国1億2330万人が見る情報に、分かりやすさを加える
これこそが、厚生労働省が今後果たしていくべき使命なのです。
デザイン専門官の具体的な業務
ここからは、先日まで募集がおこなわれていたデザイン専門官の具体的な業務について見ていきましょう。
このデザイン専門官という職種は採用人員1名で、令和5年12月26日(火)~令和6年2月11日(日)の間に募集がおこなわれていました。
デザイン専門官の募集としての具体的な業務は以下の3つ。
- デザイン基盤の構築
- デジタルPR/広告で使用する素材の作成
- 国民向け広報素材の添削・修正提案
引用:厚労省初となる「デザイン専門官」を募集。デザインの力で広報改革を推し進めてくれる方、ぜひご応募ください。|厚生労働省 (note.jp)
それでは、順番に見ていきましょう。
デザイン基盤の構築
まずは、職員共通の指針となるデザインに関するガイドラインの作成をしなければなりません。
というのも、いくら外部からデザインの造詣に深い人材を起用しても、省内の職員はデザインの専門家ではない一般の職員。
そのため、目指すべき目標を共有するためのガイドラインやひな形等の指針が必要となるのです。
その、具体的な広報改革関連業務について、厚生労働省の公式ホームページにも記載がありました。
(1)デザインに関する統一的なガイドラインの作成(UD等含む)
(2)チラシ(縦型A4サイズ)のひな形作成 ※セミナー案内、啓発、注意喚起等
(3)パワーポイント統一フォーマットの拡充(カラーパレット含む)
(4)厚生労働省の広報物に使えるピクトグラムやロゴマークの作成
(5)厚生労働省ウェブページやバナー広告の見やすさ改善アドバイス
引用:デザイン専門官の募集について│厚生労働省 (mhlw.go.jp)
デザイン専門官として採用された場合、上記の業務をチームで連携しながら担当していくことになります。
デジタルPR/広告で使用する素材の作成
次に、デジタルPR/広告で使用する素材の作成についての業務があります。
最近では、SNS(X、Facebook、LINE、note、YouTube等)で広報戦略を取っていくとのは、民間でも行政でも当たり前の世の中になってきました。
デザイン基盤の構築についてがマクロな視点からの改革であったのに対し、デジタルPR/広告で使用する素材の作成はミクロな視点からの日常業務と言えるでしょう。
(1) 厚生労働省の政策等を周知するための広報資料(チラシ、リーフレット、パンフレット等)についてパワーポイントを使用してブラッシュアップする
(2)SNS(LINE、note、X、Facebook、YouTube)用のグラフィックデザインの作成
(3)ウェブサイト等で使える、チャート・図等のインフォグラフィックの作成
こちらの業務については、グラフィックデザイナーの業務に比較的近いものとなっています。
ただ、デザインの世界で一般的に使用されているAdobeのIllustratorやPhotoshopではなく、パワーポイントを使用してのブラッシュアップという所が特徴的。
やはり、一般職員が使用できるソフトとしてはパワーポイントの方が使いやすいということでしょう。
国民向け広報素材の添削・修正提案
デザイン専門官の業務は、広報改革やデザイン素材の作成だけにとどまりません。
各部署の職員がパワーポイントで作るチラシやリーフレット、ポスターなどのブラッシュアップも必要となってきます。
というのも、常に外部へデザイン業務を委託していてはそれだけで予算が枯渇してしまいます。
そのため、施策を担当する職員が国民向けのチラシやポスターを手作りすることも多く、各職員のデザインスキルの底上げをおこなっていかなければなりません。
場合によっては、自らがデザイン関連の広報研修をおこなったり、外部パートナーとして大学教授や専門の講師から協力を得ることも必要になるでしょう。
このようにデザイン専門官の業務は多岐に渡りますが、民間企業のデザイナー職では味わえない幅広い業務を担当することが可能。
デザイン専門官の業務は全体を見渡すことのできる、幅広い視点が必要とも言えるでしょう。
デザイン専門官の応募資格や給与等の待遇について
さて、ここまでデザイン専門官の業務内容について色々と見てきましたが、やはり気になるのは応募資格や給与等の待遇面についてでしょう。
今回の募集自体は終了している者の、今後似たような募集があった際には必ずチェックしておくべきポイントとなります。
- デザイン専門官の応募資格
- デザイン専門官の雇用形態
- デザイン専門官の給与
- デザイン専門官の勤務時間
- デザイン専門官のデザイン専門官の福利厚生
- デザイン専門官の休日休暇
- デザイン専門官の勤務地
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
今の自分の状況と照らし合わせて、次の募集があった時のために備えておきましょう!
デザイン専門官の応募資格
まずは、デザイン専門官募集時の応募資格について見ていきましょう。厚生労働省のホームページには、以下のように記載がありました。
次の(1)~(3)の要件すべてに当てはまる方
(1) 上記に記載したデザイン業務に関連する実務経験(おおむね8年以上)を有する方。
(2)パワーポイントを使った資料作成が得意で、一般事務レベルでワードとエクセルの操作ができる方
(3) 広報チームの一員として日常的に職員や外部専門家などと連携を取りながら業務を遂行できる方
引用:デザイン専門官の募集について│厚生労働省 (mhlw.go.jp)
ちなみに、(1)の「上記に記載したデザイン業務」というのは「デザイン専門官の具体的な業務」の見出しの部分で紹介した内容のことです。
一方、転職サイト「en転職」の記載の方は以下の通り。
▼以下すべてに当てはまる方を募集します。
【1】PowerPointのデザインスキルをお持ちの方
【2】政策などの情報を分かりやすいデザインに落とし込むことができる方
【3】コミュニケーションを取ってデザインの意図を読み取れる方
◎Photoshopなどのデザイン系ソフトが使える方は歓迎します!
▼以下に当てはまる方は歓迎します!
□影響力が大きい仕事がしたい方
□市場価値を高められる仕事がしたい方
□周りと連携しながら自走して、デザイン制作ができる方
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
1~3に関する応募資格については、ほぼ同義でしょうか。
両社の募集資格の文言は多少異なるものの、求められる資格については概ね同じ資質について記載されています。
厚生労働省としてはAdobeのIllustratorやPhotoshopの扱いに長けた人材ではなく、あくまでもPowerPointを使用しての職員育成に力を入れていきたいという思いが見て取れます。
デザイン専門官の雇用形態
デザイン専門官の雇用形態としては、「契約社員」ということになります。
もう少し正確に言うと、「任期付職員」という身分になります。
厚生労働省は行政の機関になるので、社員という肩書ではなく、任期のある職員という肩書になります。
任期は3年としての募集でしたが、募集要項をみてみると待遇は正規の職員と同等のようです。
デザイン専門官の待遇については、このあと詳しくみていきます。
デザイン専門官の給与
デザイン専門官の給与については、以下のような記載がありました。
給与部分以外にも賞与や各種の手当が支払われますので、待遇としてはかなり好待遇と言えるでしょう。
月給34万円~53万円+賞与年2回(昨年度実績4.5ヶ月分)+各種手当
【想定年収】約600万円~700万円 (大学卒業後、45歳で採用された場合)
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
給与について、低いと思うか高いと思うかは人それぞれだと思いますが、世間一般で言われている平均年収400万円のラインは、余裕で超えています。
任期があるとはいえ、デザイン関連の職種でここまでの好待遇を提示してくれる組織は中々ないのではないでしょうか。
デザイン専門官の勤務時間
デザイン専門官の勤務時間は、一般職員に準じるため基本的には実労7時間45分となります。
9:30~18:15(実働7時間45分)
※時期にもよりますが、通常時の残業は多くありません。2023年4~12月の残業は月25時間程度でした。
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
残業手当も基本的にはすべて支給されるため、安心して働くことができますね。
デザイン専門官の福利厚生・待遇
デザイン専門官の福利厚生・待遇についても見ておきましょう。
■昇給年1回
■賞与年2回(昨年度実績4.5ヶ月分)
■交通費支給(規定あり)
■社会保険(労災・健康・厚生年金)
■出張手当
■社宅あり
■家族・扶養手当(配偶者月6500円、子一人月1万円)
■住宅手当(上限月2万8000円)※賃貸物件が対象となります。
■出産・育児支援制度
■託児所・育児サポート
■職員食堂あり
■退職金あり
■職場内禁煙
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
上記の福利厚生や待遇をみても分かる通り、さすが国家公務員といったところでしょうか。
社宅や住宅手当等を利用すれば、月の出費を相当抑えられる可能性があるため、手取りの給与も大幅に増やせる可能性がありますね。
他にも、宿泊施設等の各種福利厚生制度があるため、リフレッシュしながら安心して働くことができます。
デザイン専門官の休日休暇
デザイン専門官の休暇についても、国家公務員の休暇に準じます。
■完全週休2日制(土・日)
■祝日
■年末年始休暇(12月29日~1月3日)
■夏季休暇(3日)
■産休・育児休暇取得・復帰実績あり
■有給休暇
■介護休暇
■慶弔休暇
■子の看護休暇
■ボランティア休暇
参考:デザイン専門官(厚生労働省が発信する情報や広報物の作成・修正)|厚生労働省の転職・求人情報|エン転職 (en-japan.com)
休暇についても、しっかりと制度が完備されていますね。
デザイン専門官の勤務地
デザイン専門官の勤務地は霞が関の中央合同庁舎となり、転勤はありません。
厚生労働省大臣官房総務課分かりやすい広報指導室
(千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館)
※東京メトロ丸ノ内線、千代田線、日比谷線「霞ケ関駅」B3a、B3b(中央合同庁舎第5号館直通地下通路)、C1出口よりすぐ
引用:デザイン専門官の募集について│厚生労働省 (mhlw.go.jp)
もし電車で通う場合は、東京メトロ等の地下鉄を利用しての出勤となります。
公務員のデザイン職に内定するのは、日頃からアンテナを張っている人だけ!
デザイン専門官の職種は、この冬から春にかけて1名の募集がおこなわれていました。
令和6年4月1日から採用、ということだったので現在はすでに採用者が確定しています。
1名の募集ということで、かなりの高倍率であったことがうかがえますが、このブログを読んで「そんな募集があったなんて知らなかったよ!」という人もいるでしょう。
このブログを連載し始めてから色々と気付いたことがあるのですが、公務員のデザイン職の募集は定期的に募集している所もあれば、不定期に募集している所もあります。
まるで、デザイン事務所で欠員が出たときにデザイナーの募集がおこなわれるように。
もし、公務員のデザイン職を目指しているのであれば、定期的に募集を掛けている自治体や組織だけでなく、過去、不定期に募集をおこなっていた所も必ずチェックしておきましょう!
再募集がおこなわれていたのに、気づいてた時にはすでに募集が終わっていたというのでは悲しすぎます。
このブログの過去記事にも、不定期に募集をおこなっていた自治体の記事を残してありますので、ぜひチェックしてみてください。
コメント