第1巻についての書評が好評だったので、第2巻についても引き続き考察していこうとおもいます。第1巻の書評はこちら↓↓↓
本業でデザインのことをやっているときは中々客観的にこういった漫画を読むことはできなかったと思います。
ですが、デザイン業から一線を退いた後に、この漫画を読むと割と冷静に客観的に楽しむことができます。
『ブルーピリオド』第2巻のあらすじについて
概要を掴むために、まずは第2巻のあらすじをざっと見ておきましょう。
成績優秀、世渡り上手なリア充高校男子が絵を描く喜びに目覚め、美大を目指す! 膨大な夏休みの課題を終えた八虎は、ついに「美大専門の予備校」に足を踏み入れるが、そこで初めて「天才」と出会う。自分の身の丈を思い知らされた八虎の決意とは。話題沸騰のアート系上昇志向漫画、2巻登場!
Amazonの商品説明より
第2巻に収録されているタイトルは以下のとおりです。
【5筆目】予備校デビュー・オブ・ザ・デッド
【6筆目】逆にピュアかッ
【7筆目】我々はどこへ行くのか
【8筆目】受験絵画
【5筆目】予備校デビュー・オブ・ザ・デッド
今回はタイトル通り、本格的に主人公の八虎が予備校に通えるかどうか、美大に行きたいという意思をどうやって親につたえるか?
といったところが見所になっています。
私事ですが、自分も高校生の時に美大にいくか、一般大学に行くか、死ぬほど迷った結果、自分は一般大学に進むことを選びました。
あの時に選択が吉だったか、凶だったのか。は、わかりませんが、大学卒業後にデザイン専門学校にも通うこともできたので、やりたいことはやり切ったという感じです。
今のデザインの基礎力もアトリエやデザイン専門学校の実技で培ったと言っても過言ではありません。
社会に出ると基礎を鍛える場面は、ほぼ皆無です。時間とお金に余裕があるなら、遠回りなようでも、基礎を徹底的に鍛えておくことお勧めします。
話が少し逸れてしまいましたが、高校生にとって美大に行くという意思をどうやって親に伝え、協力してもらうか?
受験以前に、ここが最初の関門とも言えます。普通に考えたら絵で食べて行くなんて、夢のまた夢。といったところでしょうか。

【6筆目】逆にピュアかッ
今回の話で、八虎の周りに世界が少しだけ動き出します。
八虎と同じクラスで美術部員の女装男子、鮎川龍二というキャラクターがキーパーソンとなります。
龍二は人の目を気にせず、傷つきながらも好きな格好をして自分が好きなことを「好き」と真っ直ぐに伝えながら生きています。
一方で、八虎は龍二とは対照的で自分が好きなものは何なのか、自分がどんな人間なのか分からず、人としてレベルが低いのではないか?と葛藤する様が描かれています。
絵の世界はイコール自分の世界を表現することと表裏一体であり、自分のことが分からなければ、伝えわる絵を描くことが出来ません。
1枚のキャンバスと真剣に向かい合うということは、自分自身と真剣に対峙するということに他なりません。
この時間は人によっては、重く、辛い時間になることもあります。
自分自身、何が好きで、何を伝えたいのか?
絵を描き続けて行く限り、この疑問に常に対峙し続けることになります。

【7筆目】我々はどこへ行くのか
第7話では割とテクニック的な話が出てくるので、絵を書いている人にとっては勉強になる話だったと思います。
名画には4つの構図の要素がある話や、5つの幾何学形態で分割できる話などは中々興味深いものでした。
夏期講習では、浪人生と現役生が一緒のクラスで絵を描くことになるのですが。
普通に絵を描いている受験生は少なく、中々奇抜な発想で絵を描く姿を見て、八虎はかなりの衝撃を受けることになります。
予備校というところは中々残酷なもので、絵を書き終えた後に、上手い順に上から下まで並べられたりします。
他の人の絵と自分の絵をみると、圧倒的なレベルの違いに打ちのめされることが多々あります。
その度にくじけそうになるのですが、そこを何度も何度も何度も乗り越えながら先に進んで行くことで、自分の絵のレベルも上がっていきます。
そのためには、相当精神的にタフでないとキツイですが。。。そういったシーンもこの話の見所となっています。

【8筆目】受験絵画
予備校に真面目に通いすぎると、時々絵を描くのが辛くなる瞬間があります。かつての自分もたまにありました。
予備校では美大に合格するためにカリキュラムが組まれており、自分が描きたくない課題、描きたくないテンションの時でも、絵を描かなければいけない時があります。
そうすると、絵を描きたいというテンションになっていないので、当然いい絵を描くことが出来なくなります。
予備校の弊害はまさにその部分かも知れません。技術的にはうまくなるかも知れないけど、テクニックに走り始めると、個性が埋没してしまいます。
そんな気分を晴らそうと、八虎は自分の志望先である東京藝術大学の文化祭を訪れることになります。
ところが。文化祭当日、予備校で出会った神がかった絵を描く高橋世田介くんに遭遇することになります。
世田介くんは何故か八虎に攻撃的で、器用貧乏な八虎に対して「美術じゃなくてもよかったクセに…!」
と憎まれ口を叩き、八虎の感情を揺さぶってきます。
八虎は世田介くんほど、絵の実力が無いため、怒りと悲しみの感情を爆発させ、アトリエでその感情を全て自分の絵にぶつけていきます。
芸大の入試まで、あと120日。ここから八虎たちの闘いが本格的に始まることになります。

『ブルーピリオド』第2巻を読み終わってみての感想
いや、第1巻同様、半端なく重いっすね!(苦笑)
自分もデザイン専門学校の受験対策にためにアトリエに1年ほど通っていましたが、やはり受験当日まで様々な努力と葛藤の日々がありました。
東京芸術大学を目指してる八虎たちの努力に比べれば、自分はその足元にも及びませんが、登場人物たちに簡単に感情移入できてしまうので、かなり苦しくなったりします。
今でこそ、ある程度客観的にこのマンガを楽しむことが出来ていますが、渦中にいたらと思うと、心臓バクバクものです。
社会人になってからはここまで本気で何かに打ち込んでいる人に会える機会は中々無いので、色々なパワーを八虎はじめ、登場人物から貰うことが出来ます。
物語はこのあと、いよいよ本格的な美大受験までの過程を描くストーリーへと突入していきます。
第3巻以降の書評も続けていきますので、乞うご期待ください。
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